はじめに
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。
公認会計士・税理士として、港区や渋谷区、新宿区といった東京23区において、起業やベンチャー企業の支援してきた経験から、会社を発展させるための心強い武器になるファイナンスについて解説します。
今回は、運転資本について説明したいと思います。
運転資本は目に見えません
運転資本 ( 運転資金、ワーキングキャピタル、working capital ) とは、日々の事業活動をまわしていくために必要になる資金のことをいいます。
この運転資本は、日々の事業活動の中、色んなカタチに姿を変えて組み込まれているので、預金や借入金のように、その金額がパッと目に見えるものではないのが厄介なところです。そのため、しっかりと管理しないと、気づいたら資金ショートして黒字倒産といったことになりかねません。
運転資本を計算する
運転資本は、正確には 「 現預金を除く流動資産の残高 - 流動負債の残高 」 で計算されます。
ただし、業界や業種、自社の状況に応じて管理しやすいように、運転資本に含める項目を絞ることが普通です。
よく用いられる方法は、流動資産・流動負債から日常の営業取引にかかる部分である売上債権 ( 受取手形 + 売掛金 ) 、在庫 ( 棚卸資産 ) 、仕入債務 ( 支払手形 + 買掛金 ) だけをピックアップして、このように運転資本を計算する方法です。
運転資本 = 売上債権 + 在庫 - 仕入債務
運転資本とは何なのか
最初に、「 運転資本とは、日々の事業活動をまわしていくために必要になる資金 」 と書きました。
ビジネスでは、取引ごとに代金を現金でやりとりをするのではなく、”掛け”による代金払い、すなわち、1ヶ月など一定期間の取引をまとめて後日に一括で決済する方法がとられています。
また、仕入れた商品や製造した製品は、すぐに売れるわけではなく、在庫として動かかない期間が少なからずあります。あたりまえですが、在庫は売れるまでお金は入ってきません。
これを踏まえて、運転資本をもう少し具体的に言うと、
運転資本とは、売上と仕入の掛け払いによる決済日のズレ、そして在庫として眠っている期間を補うために必要となる資金を意味するのです。
一般的なビジネスにおける運転資本
製造業のビジネスの流れを見てみましょう。
材料を仕入れる → 製品を作って在庫になる → 製品を売る
資金決済日を加えてもう少し詳しく書くと、
材料を仕入れる ( 仕入れ代金は1.5ヶ月後に支払 ) → 在庫期間 ( 1ヶ月 ) → 製品を売る ( 売上代金は1か月後に入金 )
時系列で見てみると、
このように、キャッシュアウトフロー ( 仕入れ代金の支払い ) からキャッシュインフロー ( 売上代金の入金 ) まで0.5ヶ月間の資金の不足が生じています。この資金不足こそが運転資本なのです。
小売業や飲食業などの現金商売を除けば、多くの業界は運転資本がプラス、すなわち日常的な資金不足が生じることになります。この資金不足を何でまかなうのか、借入金でまかなうのか、利益剰余金でまかなうのか、しっかりと管理しなければなりません。運転資本が用意できないと、資金ショートとなって、最悪の場合、倒産してしまうことになります。
現金商売における運転資本
小売業や飲食業などの現金商売のビジネスの流れを見てみると
材料を仕入れる → 商品を売る
資金決済日を加えてもう少し詳しく書くと、
材料を仕入れる ( 仕入れ代金は1.5ヶ月後に支払 ) → 在庫期間 ( 1ヶ月 ) → 商品を売る ( 現金で即日入金 )
時系列で見ると
このように、キャッシュアウトフロー ( 仕入れ代金の出金 ) からキャッシュインフロー ( 売上代金の入金 ) まで0.5ヶ月間の資金余剰が生じています。現金商売では、出金のタイミングよりも入金のタイミングが早く、資金余剰が生じるため運転資本はマイナスになるのです。これが 「 現金商売は強い 」 と言われる所以です。
おわりに
運転資本を管理することは、資金繰り管理の重要なポイントです。運転資本の管理は利益には直結しないため軽視されがちですが、利益以上に重要な指標であるキャッシュフローに直結します。
売上仕入の増減で運転資本も大きく増減するので、しっかりと管理して把握してくださいね。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。