賃貸物件の役員社宅で節税しよう(法人)

はじめに

こんな家に住みたい東京都港区の税理士こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、社長など会社役員の住居(賃貸物件)を社宅にすることで節税する方法を紹介します。

会社所有の社宅による節税については、役員社宅(会社所有)で節税しよう(法人)を参照ください。

 

 

役員社宅で節税

住居について、社長など会社役員が個人で賃貸借契約をして毎月支払っている住宅の家賃は、所得税を計算するうえで自分の必要経費にもなりませんし、法人税を計算するうえで会社の損金にもなりません。

しかし役員が賃借している住居を、個人ではなく会社が賃貸借契約して、会社の社宅として会社が借りた住居を役員に貸し付けると、会社が支払う家賃と役員から受け取る家賃の差額を損金にすることができます。

住居所有者→貸付→役員というカタチを、

住居所有者→貸付→会社→貸付→役員にするのです。

 

 

賃貸物件の役員社宅の数値例

賃貸物件を役員社宅にした場合について、具体的な数字をつかってみてみましょう。数字はおおまかに試算したものです。

 

 

賃貸物件を役員社宅にしない場合

賃貸物件を役員社宅にしない場合の数値例です。

役員給与50万円
役員の住居の家賃20万円

会社は役員に役員給与として50万円を支払い、その50万円は会社の損金になります。

役員は受け取った役員給与50万円から税金4万円(所得税と住民税の計)と社会保険料7万円(厚生年金と健康保険の計。会社負担分は同額の7万円)がマイナスされて、手取りは39万円。

この39万円から家賃の20万円をマイナスして最後に手もとに残るのは19万円になります。

会社の負担分は役員給与50万円と、役員の社会保険料7万円の合計57万円です。

 

 

賃貸物件を役員社宅にする場合

賃貸物件を役員社宅にする場合の数値例です。

役員給与40万円
役員が会社に払う社宅家賃10万円

役員の住居を法人契約にして、会社が20万円で借りた住居を、役員に10万円で貸します。会社が社宅費用として負担した10万円を役員給与から減らして、40万円を役員給与とします。この役員給与40万円は会社の損金になります。会社が負担した社宅費用の10万円(20万円-10万円)についても会社の損金になります。

役員は受け取った役員給与40万円から税金3万円(所得税と住民税の計)と社会保険料6万円(厚生年金と健康保険の計。会社負担分の同額の6万円)がマイナスされて、手取りは31万円。

この31万円から社宅家賃の10万円をマイナスして最後に手もとに残るのは21万円になります。給与額面が下がったことにより、税金と社会保険料が減って、手もとに残る分は増えています。

会社の負担分は役員給与40万円と役員の社会保険料6万円、社宅10万円の56万円です。社宅にした方が、給与額面が下がり社会保険料が減った分だけ、会社の負担分は減っています。

 

 

賃貸物件を役員社宅にしない場合から役員社宅にした場合の比較

賃貸物件を役員社宅に変更した結果、
役員の手もとに残る分は、19万円から21万円に増えました。
会社が負担する分は、57万円から56万円に減りました。
つまり、役員自身、会社ともにメリットが生まれたことになります。

 

 

賃貸物件を役員社宅にする場合の注意点

賃貸物件を役員社宅にする場合には注意点があります。

 

 

役員から会社に支払う社宅賃料の設定

会社から役員へ無償で貸し付けたり、役員が会社に支払う社宅家賃が低すぎると、税務署は社宅と認めてくれません。税務署に社宅と認めてもらえないと、節税のメリットがまったく発生しないばかりか、社宅にしない場合に比べて追加で余計な税金を払わなければならなくなってしまうこともあります。

社宅の賃料は国税庁の定めた算式にしたがって適正額以上に設定しなければなりません。住宅手当として支給するのもダメです。

ざっくりと家賃の50%以上を役員から徴収していれば税務署も認めてくれるでしょう。しかし、算式にしたがい手間をかけて算定すれば、家賃の50%よりもっと低く、場合によっては役員の負担分を家賃の20%程度まで下げることもできる場合があります。具体的には次の算式で計算された家賃相当額以上の額を役員から会社に支払っていればOKです。

しかし、社会通念上社宅と認められないような豪華社宅である場合は、次の算式の適用はありません。時価が賃貸料相当額になるので豪華社宅に該当する場合は、社宅をつかった節税はできません。豪華社宅とは、例えば240平方メートルを超えた広すぎる場合や、そこまで広くなくてもプールがある場合などが該当します。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)以下の場合

次の1,2,3の合計額(一般的に家賃の50%より低くなるはずです)

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

固定資産税の課税標準額が分からないと計算できないため、その場合は便宜的に家賃の50%以上を役員から徴収しましょう。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)を超える場合

AとBの多い方の額
A:次の1,2の合計額の12分の1

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×10%(木造等の場合は12%)
  2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

B:家賃の50%

 

 

賃貸物件の固定資産税の課税標準額をどうやって調べるのか

固定資産税の課税標準額とは、1月1日における固定資産の価格として固定資産台帳に登録されている額を指します。固定資産課税台帳は市区町村に備え付けられています。例えば東京都港区にあるマンションについて調べたいなら港都税事務所、渋谷区にあるアパートについて調べたいなら渋谷都税事務所、新宿区にある一軒家について調べたいなら新宿都税事務所といった具合です。

この固定資産課税台帳、昔は所有者しか閲覧できませんでしたが、平成15年4月1日からは借りている人も閲覧できるようになりました。借りている人が閲覧する場合は、賃貸借契約書などが必要になりますので、その物件がある市区町村にお問合せ下さい。

 

 

賃貸物件について法人契約できるのか

社宅で節税する場合は、法人での賃貸借契約が必須です。役員が直接契約している場合の家賃を会社が負担するといったことダメです。
法人契約ができない物件は少なくありません。新しく物件を借りる場合は法人契約が可能な物件を探せば良いのですが、役員が現在居住している賃貸物件について、個人契約から法人契約に変更することは難しいと思ってください。変更が可能の場合でも、基本的にはイチから契約をやりなおすことになります。改めて審査がされて、敷金礼金なども新たに発生することになるかもしれません。
社宅を利用した節税を考えている場合は、自分だけでやろうとせずに、ぜひ税理士に相談してください。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧を参照ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。