はじめに
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。
会社を退職して、フリーランス・個人事業主として独立、起業して自分の会社をつくった方は、老後の生活資金となる退職金にあたる蓄えを自分で準備しなければなりません。そんなフリーランス・個人事業主、起業家の方にとって、小規模企業共済や個人型確定拠出年金は退職金の代わりや公的年金の上乗せになり、豊かな老後の生活の支えになるでしょう。
しかも小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛け金を支払ったときには節税にもなるのです。
そこで今回は、小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛け金を支払った場合に、所得控除を受けることができる小規模企業共済等掛金控除について説明します。
特に、似ている制度である小規模企業共済と個人型確定拠出年金の比較、どちらに加入するべきかについてお話したいと思います。
小規模企業共済そのものについては、小規模企業共済で節税(フリーランス・個人事業主、法人の役員)を参照ください。
小規模企業共済等掛金控除とは
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済の掛金、個人型確定拠出年金の掛金、心身障害者扶養共済の掛金を支払った場合に受けることができる所得控除です。
小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引くことができる金額
小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引くことができる金額は、その年に支払った掛金の全額です。
実際に支払った金額が対象となるので、12月31日時点でまだ払っていない分は、その年の小規模企業共済等掛金控除の対象にはならず、実際に支払った年の社会保険料控除の対象になります。
平成✕6年12月分の確定拠出年金の掛金について、口座に残高が足りず口座振替で支払うことができなかった場合は、平成✕6年の小規模企業共済等掛金控除には含まれません。
前納(前払い)した分の小規模企業共済の掛金については、前納した期間のうち1年内のものだけが、支払った年の小規模企業共済等掛金控除の対象になります。なお、確定拠出年金については、前納の制度はありません。
小規模企業共済等掛金控除を受けるには
フリーランス・個人事業主の方が小規模企業共済等掛金控除を受けるには、確定申告する必要があります。確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記載して、支払った掛金の証明書を確定申告書に添付するか提示します。
なお、会社勤め、会社役員の方などは確定申告する必要はありません。「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を年末調整時に会社に提出すればOKです。
小規模企業共済と個人型確定拠出年金の比較
小規模企業共済と個人型確定拠出年金を比較すると下表のようになります。
小規模企業共済 | 確定拠出年金 | |
掛金の上限 | 月70,000円 | 月68,000円 |
掛金の下限 | 月1,000円 | 月5,000円 |
掛金の増額 | かんたん | かんたん |
掛金の減額 | めんどう | かんたん |
受取条件 | 廃業など | 60歳から |
一時金で受取 | OK | OK |
年金で受取 | OK | OK |
節税 | 掛金全額所得控除 | 掛金全額所得控除 |
予定利率 | 1.0% | 運用成績による |
途中解約 | できる | できない |
インフレ | 弱い | 強い |
運用先 | 不透明 | 自分で選ぶ |
東京都港区の税理士法人インテグリティ調べ |
小規模企業共済のメリット
- 掛金を担保とした貸付制度がある
- 途中解約ができる
小規模企業共済のデメリット
- 途中解約すると元本割れする可能性がある
- 毎月の掛金を減らすことが難しい
個人型確定拠出年金のメリット
- リスク許容度に応じて運用先を選べる
- 個人別に運用されるため、他とリスクが遮断される
- 毎月の掛金を減らすことが簡単
個人型確定拠出年金のデメリット
- 60歳になるまで受け取れない
- 途中解約ができない
- 掛金が少ないと手数料が割高になる
小規模企業共済と確定拠出年金、どちらが良いのか
このように、小規模企業共済と確定拠出年金は似ているようでけっこう違いがありますね。
そこで、どちらに加入すればいいのかということですが、事業の内容や年齢、家族構成などによってベストは変わってくるので一概にどちらが良いとは言えないのがツライとこです。
それではつまらないので、私ならどうするかということでお話したいと思います。
- 起業と同時に小規模企業共済を月1,000円からスタート
- 事業の安定に応じて、小規模企業共済を段階的に月30,000円まで増額
- さらに事業が安定してきたら、小規模企業共済の月30,000円にプラスして確定拠出年金に月20,000円で加入
- その後も事業の懐具合に合わせて、小規模企業共済と確定拠出年金の掛金が半々となるように増額していき、掛金上限を目指します
その他の所得控除
その他の所得控除につきましては、下表のリンク先のページを参照ください。
所得控除の名称 | 詳細を開設したリンク先 |
所得控除の一覧 | 所得控除まとめ |
雑損控除 | 雑損控除とは?災害盗難横領の損害を確定申告で節税 |
医療費控除 | 医療費控除とは?医療費の範囲はけっこう広いです1 |
医療費控除とは?医療費の範囲はけっこう広いです2 | |
社会保険料控除 | 社会保険料控除とは?実際に支払った分が対象です |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模起業共済等掛金控除とは?確定拠出年金と比べて |
生命保険料控除 | 生命保険料控除とは?家族の分も対象になります |
地震保険料控除 | 地震保険料控除とは?年間保険料5万円以下なら全額控除されます |
寄付金控除 | 寄付金控除とは?ふるさと納税も含まれます |
寡婦・寡夫控除 | 寡婦・寡夫控除とは?年齢の制限はありません |
勤労学生控除 | 勤労学生控除とは?職業訓練学校もOKです |
障害者控除 | 障害者控除とは?16歳未満の扶養親族も対象です |
配偶者控除配偶者特別控除 | 配偶者控除、配偶者特別控除とは?1-けっこう奥が深いです |
配偶者控除、配偶者特別控除とは?2-いろんな壁があります | |
扶養控除 | 扶養控除とは?一緒に住んでいない親族も対象になります |
東京都港区の税理士法人インテグリティまとめ |
おわりに
小規模企業共済について、くわしくは、小規模企業共済で節税(フリーランス・個人事業主、法人の役員)を参照ください。
確定拠出年金については証券会社などのホームページが分かりやすくまとまっています。
仕事をリタイアするのなんてまだまだ先のこととお考えの方も、資金に余裕がある方はぜひ、小規模企業共済、個人型確定拠出年金に加入して節税するとともに将来に備えてください。とくに小規模企業共済は契約者貸付制度など、節税以外にもメリットがあります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。
東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。