はじめに
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。
今回は節税ではありませんが、同じ効果がある社会保険料の削減のお話をしたいと思います。
社会保険の概要
社会保険とは一般的に健康保険と厚生年金、労働保険(雇用保険と労災保険)のことを言います。法人は従業員の有無を問わず全ての法人に加入義務があり、個人事業主は5人以上の従業員がいる場合(一部の業種を除く)に加入義務があります。
社会保険料
健康保険と厚生年金の保険料は労使折半です。事業主(法人、個人事業主)が半分、従業員が半分支払います。雇用保険の保険料は事業主が多めに支払い、労災保険の保険料は事業主が全額支払います。
この社会保険料の負担はバカにならないので、なんとか削減したいと考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。
社会保険料の削減
以下においては狭義の社会保険(健康保険と厚生年金)についてお話します。
社会保険の保険料は、毎月のお給料の金額をもとにして標準報酬月額が決まって、その標準月額報酬に保険料率を乗じて計算されます。
具体的な数字でみてみましょう。
標準報酬月額は、「報酬月額〇〇円以上〇〇円未満 標準報酬月額〇〇円」というように決定されます。自分の会社の健康保険組合を持っていない中小企業が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の東京の平成26年度の場合はこうなっています。
- 月額報酬が290,000円以上310,000円未満の場合 → 標準報酬月額は300,000円
- 月額報酬が310,000円以上330,000円未満の場合 → 標準報酬月額が320,000円
このように毎月のお給料の金額の範囲があって、その範囲内では一律で標準月額報酬が決められてしまうのです。上記の例ですと、毎月のお給料が310,000円と309,990円と10円違うだけで、標準月額報酬は20,000円も差が出てしまうのです。
保険料は標準月額報酬に保険料率を乗じて計算されるので、標準月額報酬が下がれば保険料は安くなります。
事業者負担分 保険料 | 従業員負担分 保険料 | ||||||
お給料 | 標準月額報酬 | 健康保険 | 厚生年金 | 合計 | 健康保険 | 厚生年金 | 合計 |
309,990円 | 300,000円 | 17,535円 | 25,680円 | 43,215円 | 17,535円 | 25,680円 | 43,215円 |
310,000円 | 320,000円 | 18,704円 | 27,392円 | 46,096円 | 18,704円 | 27,392円 | 46,096円 |
差額 10円 | 20,000円 | 1,169円 | 1,712円 | 2,881円 | 1,169円 | 1,712円 | 2,881円 |
310,000円のお給料を309,999円にするだけで、事業主と従業員の双方が保険料を毎月2,881円削減することができます。事業主は2,881円節約できるし、従業員はお給料の額面が10円減ってしまいますが、手取りは2,871円増えることになります。
2,881円の削減なんて大したことないと思われてしまうかもしれませんが、
従業員が10名いるとすると、1年間で345,720円、10年間で3,457,200円の削減になります。
- 2,881円×12か月×10名=345,720円
- 345,720円×10年=3,457,200円
従業員が100名いるとすると、1年間で3,457,200円、10年間で34,572,000円の削減になります。
- 2,881円×12か月×100名=3,457,200円
- 3,457,200円×10年=34,572,000円
このように社会保険料削減のポイントは、給料を標準月額報酬が繰り上がる直前の金額に設定することにあります。
小さな節約でも積み上がれば大きな金額になりますね。
お給料の額を決めるときには、ぜひ標準月額報酬の金額の境目を意識してください。
社会保険料の削減についてお話しましたが、ここでは理解を目的に詳細を省いてざっくりと説明したので、実際の運用の際には税理士や社会保険労務士にご相談ください。
おわりに
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。