消費税の増税で得をする消費税免税事業者

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として港区や渋谷区、新宿区など東京23区のベンチャー企業や起業家様を支援してきた経験から、株式会社などの法人の方、フリーランス・個人事業主などの個人の方の税金や節税について解説します。

今回は、消費税の増税で得をする消費税免税事業者について説明したいと思います。

 

 

消費税免税事業者とは

消費税の免税事業者とは、消費税の納税の義務が免除される事業者、つまり消費税を納めなくていい事業者のことをいいます。

株式会社などの法人やフリーランス・個人事業主といった事業を営んでいる者のうち、特定期間の売上高が1,000万円以下の事業者などは消費税の免税事業者になります。

詳細は下記ページを参照ください。
売上1,000万円-消費税の納税義務が免除

この消費税の免税事業者は、消費税が増税されると得をすることになります。

 

 

なぜ消費税の増税で得をするのか

なぜ消費税の免税事業者は、消費税増税で得をするのでしょうか。

消費税が免税されない事業者は、売上などの受け取った消費税から、仕入れや経費などの支払った消費税を差し引いた差額の消費税を納めます。普通は売上の方が仕入れや経費よりも大きいため、受取消費税から支払消費税を差し引いた差額はプラス、つまり消費税を納めることになります。(受取消費税よりも支払消費税の方が多く、差額がマイナスになってしまう場合は差額が還付されます。)

対して消費税の免税事業者は、売上などの受け取った消費税から、仕入れや経費などの支払った消費税を差し引いた差額の消費税について、納める必要はありません。消費税が増税されると、この差額も大きくなることから、得をすると言われているのです。

もちろん受取った消費税がまるまる手元に残るわけではありません。受取った消費税から支払った消費税を差し引いた差額だけが手元の残ることになります。

 

 

なぜ消費税の免税事業者という制度があるのか

なぜ消費税の免税事業者という制度があるのでしょうか。税金を集めたいはずの税務署(国)は、なぜこんな制度を定めているのでしょうか。

それは、売上が1,000万円に満たないような小規模な事業者については、納める消費税の金額を計算して税務署に申告するのは手間がかかるので要件を定めて免除しましょう、という小規模事業者の保護救済を図るためです。

 

 

売上1,000万円以下だけど消費税を請求していいの?

自分は売上1,000万円以下の免税事業者だけど、お客様に消費税を請求していいの?
こんな疑問を持たれる方がけっこういらっしゃいます。

もちろんお客様に消費税を請求して問題ありません。
消費税の免税事業者は、消費税の納税の義務が免除されるだけで、消費税を受け取ってはいけないなんていう決まりはありませんので。

立場の弱いフリーランスの方など、クライアントから「売上1,000万円以下なんだから消費税は払わなくていいよね?」なんて言われることもあるかもしれません。そんな時に、「私は免税事業者ですが、正当な権利としてごにょごにょetc」と説明するのは面倒です。シンプルに「おかげさまで売上1,000万円超えたので消費税を請求させて頂きます」と言って消費税を請求してください。

 

 

本当に免税事業者は得なのか

本当に免税事業者は得なのかと言うと、難しい部分もあります。

免税事業者は小規模であることから立場が弱い場合が多く、仕事を受注するために消費税を請求しづらい場合もあるでしょう。一方、仕入れや経費の支払いにかかる消費税は確実に支払わなければいけません。

消費税の免税事業者の手元に残る消費税について、本来であれば納めなければいけないのに利益のように手元に残しておくことができるという制度は、いわゆる益税と言われて批判されることがあります。理屈の上ではお得といえますが、実際にはそれほど利益になっていない場合が多いのが現状です。

 

 

おわりに

消費税は税金のプロである税理士でも間違うことが多い税金です。消費税について迷ったり困ったことがあったら、ぜひ税理士に相談してみてくださいね。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

預貯金など金融資産保有額の平均はどのくらい?数字のトリックにだまされない

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

貯金預金などの金融資産の平均保有額をご存知ですか?ある雑誌の記事によると、単身世帯の平均が774万円、2人以上世帯の平均が1,182万円とのことです。自分の予想よりもはるか上をいっていて、みんなお金持っているんだなあとビックリしたので少し調べてみました。

 

 

預貯金など金融資産保有額の平均値

預貯金などの金融資産の平均保有額についての雑誌記事のソースをたどってみると、日本銀行の中が事務局にある金融広報中央委員会というところが公表している「家計の金融行動に関する世論調査 平成26年調査結果」(以下、調査結果)というものに突き当たりました。

調査結果を見てみるとたしかに

  • 単身世帯の金融資産保有額の平均値は774万円
  • 2人以上世帯の金融資産保有額の平均値は1,182万円

とあります。

 

 

預貯金など金融資産保有額の中央値

調査結果には、雑誌記事には書かれていない重要な数値として、預金など金融資産保有額の中央値というものがありました。

  • 単身世帯の金融資産保有額の中央値は75万円
  • 2人以上世帯の金融資産保有額の中央値は400万円

 

 

保有金融資産の平均値と中央値

保有金融資産の平均値だけみると、「自分はそんなに持っていない」と感じる方が多いかもしれません。保有金融資産の平均値というものは、少人数のお金持ちによって、その値を大きく引き上げられているため、多くの人の実感とかけ離れた金額になってしまうのです。この平均値の問題点については調査結果にもちゃんと書いています。

預金など保有金融資産の平均値

 

そこで、このような欠点をカバーするために、平均値だけでなく中央値も用いることが有用になる場合があります。保有金融資産の中央値とは、調査対象世帯を保有額の少ない(または多い)順番に並べたときに、真ん中にくる世帯の金融資産保有額のことをいいます。

例えば、自分の保有する金融資産が中央値とちょうど同じ金額の世帯の場合、ちょうど半分の世帯が自分の保有する金融資産よりも多くの金融資産を保有しており、ちょうど半分の世帯が自分の保有する金融資産よりも少ない金融資産を保有していることになります。
そのため保有金融資産の中央値は、世帯全体の実感により近い数字になると考えられます。

預金など保有金融資産の中央値

 

エクセルで中央値を算出するにはMEDIAN関数を使えばOKです。
なお、中央値が良くて平均値がダメという話ではありません。利用するデータの種類と何を知りたいのかなどでどちらが有用なのかは変ってきますので。

 

 

調査方法

この「家計の金融行動に関する世論調査 平成26年調査結果」の調査方法は、下記のようになっています。

  • 単身世帯が、全国2,500世帯のインターネットモニター調査
  • 2人以上世帯が、層化二段無作為抽出法によって抽出された全国8,000世帯の訪問と郵送の複合・選択式で回収率は49.4%

金融資産が少ない人よりも多い人の方が回答する確率が高いかもしれません。
見栄を張って多い金額を回答するかもしれません。
その結果、実際の保有金額を表していないことも考えられます。あくまで上記のような調査を行って、その結果としてこのような値が出たということを覚えておいてくださいね。

 

 

数字にだまされないように

アンケートや調査結果などを見る場合は、その母集団はどうやって選んだのか、どうやって調査したのかを意識するようにすると数字にだまされにくくなります。

 

例えば、

CMなどで「アンケートの結果、90%の購入者が満足しています」などと言っている場合は注意しましょう。

  • 何回もアンケートをとって、その中で一番いい結果のものを言っているのではないか
  • アンケートの際にプレゼントなどを渡して良い回答を誘導していないか
  • 「買って満足しましたか」と面と向かって聞かれて「満足していない」と答えるのは気が引ける
  • そもそもそんなアンケートなんてとっていない

インターネット上のアンケートで、「インターネットを利用したことがありますか?」と聞けば、「利用したことがある」と100%答えるでしょう。バカなこと言ってと思われるかもしれませんが、このようなアンケートや調査は散見されます。

 

 

おわりに

公認会計士・税理士という仕事柄、数字を疑ってかかる癖がついているのかもしれませんね。

保有金融資産の話から最後は脱線してしまいましたが最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
税金や節税、起業などについて、皆様のお役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしかったら情報の一覧もご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

機会費用を意識して行動しよう

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、経営に役立つビジネス手法やファイナンスについて解説します。

今回は、仕事だけでなく日々の生活においても役に立つ機会費用という考え方について説明したいと思います。

 

 

機会費用とは

機会費用(opportunity cost)とは、ある行動を選ぶことによって失われてしまう、他の行動を選んでいたら得られたであろう経済的価値のことをいいます。

費用という言葉を使いますが、実際にお金が出ていくわけではないので、目に見えるものではありません。そのため少々理解しづらくなっています。

下記で機会費用の具体例をいくつか紹介しますので、それを読んで頂ければなんとなく理解できると思います。

機会費用(opportunity cost)

 

 

人気タレントの移動手段

あなたは人気タレントをかかえる芸能事務所の社長です。この人気タレントは1時間あたり10万円を稼いでくれます。人気タレントの移動手段は何を使わせるべきでしょうか。

  1. 1時間かけて電車で移動させる。電車賃は1,000円
  2. ハイヤーを手配して30分で移動させる。ハイヤー料金は1万円

1. の場合は、電車賃1,000円の実際費用と、1時間仕事をしたら稼いでくれたであろう10万円の機会費用が発生します。よって、合計の費用は10万1,000円になります。

2. の場合は、ハイヤー料金1万円の実際費用と、30分仕事をしたら稼いでくれたであろう5万円の機会費用が発生します。よって、合計の費用は6万円になります。

芸能事務所の社長としては、合計の費用が少ない 2. のハイヤーを選んだほうがお得になりますね。加えて、ハイヤーを選んだほうが人気タレントも気持ちよく仕事をしてくれて、さらに長時間働いて稼いでくれるかもしれません。

 

 

会社の朝礼

従業員100名のとある会社では、従業員全員が参加する朝礼を毎日30分行っています。従業員のお給料を時給に換算すると時給3,000円です。

この会社では朝礼に対して毎日15万円(時給3,000円×0.5時間×100名)という機会費用が発生していることになります。朝礼に15万円の価値があるのかどうか検討する必要がありますね。
会議を行うときにはコストがかかっているということを常に意識します。会議が有益なのか、それとも無駄なのかを判断するためには機会費用を考えてみてください。

 

 

専業主婦

独立行政法人労働政策研究・研修機構の統計によると、正社員として定年まで働いた場合の女性の生涯賃金は約2億円とのことです。

一度も働かずに専業主婦になった場合は、働いていれば得られたであろう2億円が機会費用になります。出産や子育てなどで退職する場合は、2億円から今まで稼いだ分を差引いた金額が機会費用になります。

若い方を中心に最近また専業主婦志向が高まっているようですが、このように具体的な金額が出てくると判断が変わってくるかもしれません。

 

 

おわりに

機会費用が発生するのは時間というものが限りあるためです。すべての行動は機会費用の上になりたっている、ということを理解していると有意義に過ごせるかもしれませんね。

機会費用以外にも、ビジネスだけでなく生きる上で役に立つ考え方として下記ページも参照ください。
ビジネスも人生もサンクコスト(埋没費用)に振り回されないように

 

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

パソコン(PC)を経費にしたい!いくらまでなら大丈夫?

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として港区や渋谷区、新宿区など東京23区のベンチャー企業や起業家様を支援してきた経験から、株式会社などの法人の方、フリーランス・個人事業主などの個人の方の税金や節税について解説します。

今回は、経費にできるパソコン(PC)の金額について説明します。

 

 

パソコンを経費に

そもそも、パソコンを「経費にできる、経費で落とす」とはどういう意味なのでしょうか。

ここで言う経費とは、税金を計算するうえで費用として認められるものを指します。

  • 株式会社などの法人の場合は、「損金」といいます。
  • フリーランス・個人事業主など個人の場合は、「必要経費」といいます。

これらが多ければ、その分だけ所得(税金計算上の儲け)が減るので節税になります。

 

通常、パソコンを購入した場合は固定資産として経理処理します。固定資産は、その名のとおり経費ではなく資産なので、購入した時点では経費にはなりません。減価償却という手続きによって、数年間をかけて少しずつ経費になります。

しかし節税のためには、数年間をかけて少しずつ経費になんて悠長なことを言わずに、パソコン購入時に一括で経費にしたいものです。そこで税法は高価なパソコンでなければ、購入時に一括で経費にすることを認めています。

 

 

10万円未満のパソコン

10万円未満のパソコンを購入した場合は、一括で経費にすることができます。固定資産にする必要はありません。

 

 

10万円以上30万円未満のパソコン

10万円以上30万円未満のパソコンを購入した場合、下の条件をすべて満たすと、少額減価償却資産の特例を適用でき、一括で経費にすることとができます。

株式会社など法人の場合の条件

  • 青色申告をしている
  • 中小企業者である(資本金が1億円以下など)
  • 平成28年3月31日までに購入している
  • 購入した事業年度内に実際に使い始めている(箱の中に入れたままではダメ)
  • その事業年度における購入額の合計が300万円以下
  • 確定申告の際に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を提出

フリーランス・個人事業主など個人の場合の条件

  • 青色申告をしている
  • 平成28年3月31日までに購入している
  • 購入した年内に実際に使い始めている(箱の中に入れたままではダメ)
  • その年における購入額の合計が300万円以下
  • 確定申告の際に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を提出

上の条件をひとつでも満たすことができない場合は、固定資産として経理処理することになります。

少額減価償却資産の特例については下記ページを参照ください
少額減価償却資産の特例をつかった節税(フリーランス・個人事業主、法人)

 

 

30万円以上のパソコン

30万円以上のパソコンを購入した場合は、固定資産の器具備品として経理処理します。一括で経費にすることはできません。

 

 

10万円、30万円の判定

10万円未満、30万円未満といったパソコン購入金額の判定を行う場合のポイントを説明します。

 

消費税を含めるのか含めないのか

  • 税抜き経理を行っている場合は、消費税を含めない税抜きの金額で判定します。
  • 税込み経理を行っている場合は、消費税を含めた税込みの金額で判定します。

 

購入金額に含めるものの例

  • パソコン本体価格
  • プリインストールされているソフトウェア
  • プロセッサやメモリ、HDD(SSD)、グラフィックなどを上位にアップ

パソコン本体の中身に関するものをイメージしてください。これらは金額判定する際のパソコン購入金額に含めます。

パソコン本体と”一緒に”ディスプレイやプリンタ、キーボードなどを購入した場合は、それらがパソコン本体と1セットとみなされて、購入金額に含めることになります。ただし、これらを本体とは別に購入した場合は、それら1つ1つの金額で判定されます。

 

購入金額に含めないものの例

  • 外部ストレージ
  • ケース

パソコン本体と同時購入する付属品(それがなくてもパソコンの起動には困らないもの)などは、金額判定する際のパソコン購入金額は含めません。

 

以前に比べてパソコンは安くなったと言われていますが、高スペックを要求するクリエイターの方など、業務用のパソコンはまだまだ高価になることがあります。パソコンを購入する際は、この10万円、30万円の基準を頭の片隅に置いておくと節税になりますよ。

そして、購入金額を証明するレシートや領収書は必ず保管しておきましょう。

 

 

おわりに

残念ながら、Mac pro は税別で308,800円~、 iMac 5K も税別で258,800円~とスペックアップするとすぐに30万円以上になってしまいますね。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で、起業をお考えの方や起業して日が浅い方がいらしたら、東京都港区にある税理士法人インテグリティにお気軽にお声がけください。税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い公認会計士・税理士が、あなた事業が持続的に成長するお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

デリバティブとは | デリバティブの基礎-1

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

お金に余裕が出てくると、銀行や証券会社などの金融機関を始めとしていろんなところから儲け話が舞い込んできます。私の顧問先のお客様のところにも様々な投資話が持ち込まれていますが、顧問先支援の一環として、それらの内容についてわかりやすく説明するといったこともやっています。

今回は、金融商品のなかでも特に分かりにくいデリバティブについて、その概要を説明したいと思います。

 

 

デリバティブとは

デリバティブという言葉を聞いたことがある方はいても、その中身について知っている方は少ないかもしれません。

デリバティブ(derivatives)は、日本語では金融派生商品といいます。
英単語のderivativeには、派生物という意味があります。

デリバティブとは、株式や債券、金利、為替、コモディティ(穀物や金属、非鉄金属といった商品)などから”派生”した取引のことをいいます。
なお、株式や債券、金利、為替、コモディティなどデリバティブの元になるモノのことを原資産といいます。

デリバティブとは、一言で言うと将来に行う取引を現時点で予約する取引です。

 

 

デリバティブの例

デリバティブを簡単な例で説明します。

太郎さんと花子さんは次のような約束をしました。
現在のA株式の株価は1万円です。なお、太郎さんも花子さんも現時点ではA株式を持っていません。

  • 太郎さんは花子さんに半年後にA株式を1万円で売る約束をしました(太郎さん目線)。
  • 花子さんは太郎さんから半年後にA株式を1万円で買う約束をしました(花子さん目線)。

 

半年後のA株式の株価が1万5千円になった場合

  • 太郎さんは株式市場でA株式を1万5千円で購入して花子さんに1万円で売ります。太郎さんは5千円の損になります。
  • 花子さんは太郎さんからA株式を1万円で購入して株式市場に1万5千円で売ります。花子さんは5千円の得になります。

 

半年後のA株式の株価が5千円になった場合

  • 太郎さんは株式市場でA株式を5千円で購入して花子さんに1万円で売ります。太郎さんは5千円の得になります。
  • 花子さんは太郎さんからA株式を1万円で購入して株式市場に1万5千円で売ります。花子さんは5千円の得になります。

 

デリバティブでは、実際にA株式の売買をするのではなく、A株式の株価の現在と半年後の差額のやりとりだけすることになります。よって上記の太郎さんと花子さんの約束は、デリバティブでは下記のような約束になります。

  • 半年後のA株式が1万円より高くなったら、太郎さんから花子さんに、半年後のA株式の株価と現在のA株式の株価1万円の差額を支払う。
  • 半年後のA株式が1万円より安くなったら、花子さんから太郎さんに、現在のA株式の株価1万円と半年後のA株式の株価の差額を支払う。

 

このようにデリバティブには次のような特徴があります。

  • 現物の取引ではなく差額だけによる取引を行う
  • 買う約束だけでなく売る約束もできる

 

デリバティブの種類

デリバティブの代表的な取引としては、先物取引、スワップ取引、オプション取引があります。また、これらの取引を組み合わせたものなどデリバティブには様々な種類があります。

 

先物取引

先物取引とは、将来の定められた日に、定められた商品について、定められた数量を、定められた価格で売買することを約束する取引をいいます。

 

スワップ取引

スワップ取引とは、定められた条件で、キャッシュフローを交換する取引をいいます。
交換するキャッシュフローには金利(変動金利と固定金利など)や通貨(円とドルなど)があります。

 

オプション取引

オプション取引とは、定められた日や定められた期間に、定められた商品について、定められた価格やレートで取引する権利を売買する取引をいいます。権利を売買することに特徴があります。

 

 

デリバティブの利用目的

デリバティブの利用目的にはリスクヘッジ、アービトラージ、スペキュレーションなどがあります。

 

リスクヘッジ

リスクとは不確実性のことをいいます。
リスクヘッジ(risk hedge)とは、将来の不確実性を減らしたり回避することをいいます。

 

アービトラージ

アービトラージ(arbitrage)とは、価格の差を利用して利ざやを稼ぐことをいいます。裁定取引ともいいます。

 

スペキュレーション

スペキュレーション(speculation)とは、相場変動のリスクを負って利益獲得を目指すことをいいます。投機取引ともいいます。

 

 

おわりに

デリバティブ自体が悪なのではありません。むしろ正しく使えば有用なものです。ただし、金融機関が販売するデリバティブが組み込まれた金融商品を理解せずして購入することは控えてください。デリバティブによって一流と言われる企業や大学、地方自治体などが多額の損を被っている現状があります。

持ち込まれる儲け話にうまい話なんてありません。うまい話は自分で見つけるか、自分で編み出してくださいね。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

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