ビジネスも人生もサンクコスト(埋没費用)に振り回されないように

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、経営に役立つコーポレートファイナンスについて解説します。

今回は、ビジネスだけでなく人生においても役に立つサンクコスト(埋没費用)という考え方について説明したいと思います。

 

 

サンクコスト(埋没費用)とは

サンクコスト(sunk cost 埋没費用)とは、すでに消費してしまってもう戻ってこない費用のことをいいます。ここでいう費用とはお金だけでなく、時間や労力なども当てはまります。

意思決定(目的を達成するために案を選ぶこと)するときには、このサンクコスト(sunk cost 埋没費用)は無視します。サンクコスト(埋没費用)に振り回されないようにしてください。

ビジネスにおける投資の意思決定については下記ページも参照ください。
会社が投資をする理由は企業価値を高めるため

文章だけで理解することは難しいと思いますので、下記の具体例をご覧ください。

 

 

サンクコスト(埋没費用)の例

サンクコスト(埋没費用)の例としてこんなものがあります。

◯◯ダムの総工事費は3,000億円かかります。すでに2,500億円の工事費がかかっていますが、諸事情で◯◯ダムの工事はストップしています。完成するまで工事を行うのか、工事を中止するのかを現在議論しているところです。

 

皆さんは

  • 完成するまで工事を行うべきだと考えますか?
  • それとも工事は中止したほうがいいと考えますか?

 

もう少し具体的に、この◯◯ダムを完成させることによるメリット(経済効果)がどのくらいあれば、完成するまで工事を続けますか?

  1. 3,000億円
  2. 2,500億円
  3. 500億円

 

正解は3の500億円です。

この場合、すでに支払った2,500億円の工事費はサンクコスト(埋没費用)になります。サンクコスト(埋没費用)である2,500億円の既工事費は、◯◯ダムが完成しても、工事を中止しても戻ってくることはありません。

意思決定するときには、このサンクコスト(埋没費用)は無視して、将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけを考えます。

よって、サンクコスト(埋没費用)である2,500億円の既工事費は無視して、◯◯ダム完成までにかかる残りの工事費500億円と、◯◯ダム完成によるメリット(経済効果)を比べて工事を続けるかどうかを決定するのが正しい意思決定になります。

 

そのため、例えば◯◯ダム完成によるメリット(経済効果)が400億円だとしたら、工事は中止することになります。今まで2,500億円もかけて、あと500億円で完成するのにもったいないと思われるかもしれませんが、既に支払った2,500億円の工事費はどうやっても戻ってきません。サンクコスト(埋没費用)は無視して、あくまで将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけで判断します。

 

ちなみに、◯◯ダムの総工事費3,000億円に対して、メリット(経済効果)が500億円では少なすぎると思いませんか?

それはごもっともな意見です。もともと総工事費3,000億円に対して、メリット(経済効果)が500億円しか見込めないのであれば、最初から◯◯ダムの建設なんてするべきではなかったのです。

しかし、今回のケースのように、途中まで支出してある状態において意思決定する場合は、過去の支出したものでもう戻ってこないサンクコスト(埋没費用)は無視して考えるのです。

 

 

もったいないおばけは出ません

何度も同じことを繰り返してしつこいですが、サンクコスト(埋没費用)は無視して、あくまで将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけを比較して意思決定を行ってくださいね。サンクコスト(埋没費用)を無視してももったいないおばけは出ませんので。

サンクコスト(埋没費用)はもったいないおばけではない

 

 

色々なサンクコスト(埋没費用)

サンクコスト(埋没費用)の色々な例を紹介します。

 

資格試験勉強

資格試験勉強のためにお金、時間、労力のほとんどを使ってきたが残念なことに今年も不合格になってしまった。今さら止めることができないので、来年に向けてガンバるぞ。

→ 今までのお金、時間、労力はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。来年以降の合格後のメリット(経済効果および合格する確率)とデメリット(追加費用および不合格になる確率)を比較して資格試験勉強を続けるか断念するか決めます。

 

なくしてしまったライブチケット

楽しみにしていたアーティストのライブチケット(1万円)をなくしてしまった。もう一度チケットを買い直すか、ライブに行くのを諦めるか、どうすればいいのだろう・・・

→ なくしてしまったライブチケット(1万円)はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。ライブが1万円以上の価値があると考えるならチケットを買い直します。2万円(なくした1万円+買い直し1万円)では判断しません。

 

 

ホストへの貢物

ホストの源氏クンに振り向いてもらえるように、今までたくさん貢いできたしボトルも何本も入れてきた。いつになったら私と付き合ってくれるのかな。

→ 源氏クンに今まで貢いだ分はサンクコスト(埋没費用)なので無視して下さい。これからの可能性だけを考えて貢ぐことを続けるか考えることになります。

 

 

ギャンブルへの投資額

今日は◯◯万円も使っているのだからもう後には引き返せない。次こそ当ててやる。

→ 今までギャンブルに投資した金はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。なお、一般的にギャンブルは胴元がいるかぎり、将来のメリット(払戻金)はデメリット(掛金)を必ず下回ります(長期的には必ず損をします)。

 

いくつかサンクコスト(埋没費用)をご紹介しました。分かってはいてもなかなか割り切って考えられないですよね。

 

 

おわりに

自分自身もそうですが、「サンクコスト(埋没費用)は無視する」ということについて、頭では理解できても心で納得するのは難しいです。とは言っても頭だけでも理解することは、きっと役に立つと思います。ビジネスや人生において何かの判断に迫られたときは、ぜひこのサンクコスト(埋没費用)という概念を思い出してみてください。

 

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

損益分岐点分析(CVP分析)とは?赤字ラインを把握しよう

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、経営に役立つ管理会計について解説します。

今回は、損益分岐点分析(CVP分析)を使って赤字ラインを把握する方法について説明したいと思います。

 

損益分岐点売上高とは

損益分岐点売上高とは、利益が出るか損失が出るかの分岐点、利益がちょうどゼロになる売上高のことをいいます。

売上高 - 費用 = 利益
売上高 - 費用 = ゼロ
売上高 - 変動費 - 固定費 = ゼロ
売上高 = 変動費  +  固定費

利益は売上高から費用を差引いて計算します。

費用は変動費と固定費に分けることができます。

変動費・固定費の詳細は下記ページを参照ください。
変動費とは 固定費とは

利益がゼロになるということは、売上高が変動費と固定費の合計に等しくなることを意味します。

 

下の図における真ん中の売上高が損益分岐点売上高になります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した損益分岐点売上高の図

この損益分岐点売上高を分岐点として、損益分岐点売上高よりも売上高が大きくなれば利益が出て、損益分岐点売上高よりも売上高が小さくなれば損失(赤字)が出てしまいます。

 

 

損益分岐点分析(CVP分析)とは

損益分岐点分析(CVP分析)とは、下記の算式で損益分岐点売上高を計算することをいいます。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した損益分岐点売上高と変動費率の算式

 

実際の売上高5,000万円、変動費3,500万円、固定費1,200万円、利益300万円の場合の損益分岐点売上高

変動費率 = 変動費 3,500万円 / 実際の売上高 5,000万円 = 0.7
損益分岐点売上高 = 固定費 1,200万円 / ( 1 – 変動費率 0.7 ) = 4,000万円

 

また、損益分岐点売上を使うことで次のような分析も行うことができます。

 

安全余裕率とは

安全余裕率とは、損益分岐点売上高と比べて実際の売上高がどのくらいの余裕があるのかを表すものです。実際の売上高が損益分岐点売上高をどのくらい上回っているのかが分かります。

安全余裕率 = ( 実際の売上高 - 損益分岐点売上高 ) / 実際の売上高

実際の売上高5,000万円、損益分岐点売上高4,000万円の場合の安全余裕率
( 5,000万円 - 4,000万円 ) / 5,000万円 = 20%

 

損益分岐点比率とは

損益分岐点比率とは、実際の売上高において、損益分岐点売上高がどの辺に位置しているか
を表すものです。損益分岐点売上高が実際の売上高の何%のところにあるのかが分かります。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 / 実際の売上高

実際の売上高5,000万円、損益分岐点売上高4,000万円の場合の損益分岐点比率
4,000万円 / 5,000万円 = 80%

安全余裕率と損益分岐点比率の合計は1になります。

 

 

損益分岐点売上高を小さくする方法

損益分岐点売上高が小さければ小さいほど、少ない売上高で利益がでる体質であるといえます。固定費を減らしたり変動費率を下げることで損益分岐点売上高は小さくなります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した損益分岐点売上高を小さくする算式

 

文字で書くのは簡単ですが実際問題として、固定費を減らすのも変動費率を下げるのも容易ではありません。まずは、比較的手をつけやすい固定費から中身を精査して削減できるものを探してみてください。

 

 

おわりに

変動費と固定費の分解、そしてこの損益分岐点分析は管理会計の基本ですが、とても使い勝手がよく役に立つ経営分析の手法なので、ぜひ利用してください。

 

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変動費とは 固定費とは

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、経営に役立つ管理会計について解説します。

今回は、変動費固定費について説明したいと思います。

 

 

変動費と固定費

事業活動を行う上ではさまざまな費用が生じます。それらの費用は、発生するかたちによって変動費と固定費の2つに分けることができます。

費用を変動費と固定費に分けることで、限界利益や損益分岐点など経営管理において非常に役に立つ分析を行うことができるようになります。そのため、費用を変動費と固定費に分ける考え方をぜひマスターしてください。

 

 

変動費とは

変動費とは、売上 ( 事業活動や生産量、操業度合い ) に比例して発生する費用をいいます。

材料や商品などの仕入れ、外注費、販売手数料などは変動費に該当します。

 

 

固定費とは

固定費とは、売上 ( 事業活動や生産量、操業度合い ) に関係なく発生する費用をいいます。

人件費、家賃、減価償却費などは固定費に該当します。

 

 

売上・変動費・固定費・利益の関係

売上と変動費・固定費、そして利益の関係を算式で表すと下式のようになります。

売上 - 変動費 - 固定費 = 利益

 

算式を動かしてこのように表すこともできます。

売上 = 変動費 + 固定費 + 利益

 

ボックス図で見てみましょう。

東京都港区の税理士法人インテグリティ作成の変動費と固定費の図

 

売上の増減に応じて変動費も増減しますが、固定費は一定額で動きません。
売上高が減っていくと、ある時点で利益がゼロになり、さらに売上高が減ると赤字になってしまいます。

費用が変動費のみで固定費がないのであれば、売上が減少することで利益も減少しますが赤字にはなりません。しかし、固定費の存在によって赤字が生じてしまうのです。

どれくらい売上があれば赤字にならないのか、現在の売上は赤字になるまでどのくらいの余裕があるのか、といったことを分析するために、損益分岐点分析 ( CVP分析 ) という手法を使います。この分析手法の前段階として費用を変動費と固定費に分解する必要があるのです。

損益分岐点分析 ( CVP分析 ) のページに続きます。

 

 

おわりに

変動費と固定費の理解は、管理会計の一番の基本であり、もっとも重要なポイントであるとも言えます。自分の会社の費用を変動費と固定費に分けてみようとお考えの場合は、管理会計に詳しい公認会計士や税理士に相談してみてくださいね。

 

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財務会計と税務会計の違い | 利益は収益-費用 所得は益金-損金

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として港区や渋谷区、新宿区など東京23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援しておりますが、業務を通じてよく質問を受ける項目について解説します。

 

今回は、財務会計における利益、税務会計における所得について、その違いを説明したいと思います。

財務会計や税務会計そのものについては下記ページを参照ください。
財務会計と税務会計の違い | 考え方

 

 

財務会計における儲けは利益

財務会計では儲けのことを利益といいます。

利益は、売上などの収益から、経費などの費用を差引いて計算します。
このように計算された利益は、株主や債権者、投資家といった利害関係者に報告されます。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した利益=収益-費用

 

 

税務会計における儲けは所得

税務会計では儲けのことを所得といいます。

所得は、売上などの益金から、経費などの損金を差引いて計算します。
このように計算された所得をもとにして税金の金額を計算します。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した所得=益金-損金

(Tさんのご指摘により一部修正しました。)

 

 

財務会計の利益と税務会計の所得との違い

財務会計の利益の計算方法と税務会計の所得の計算方法はとても似ていますね。

収益と益金、費用と損金はほぼ同じなので、その結果としての利益と所得もほぼ同じ金額になります。

ほぼ同じというところが悩ましいところで、この僅かな違いが財務会計と税務会計の違いを生み出しているのです。

なぜこのような違いが出てくるのかについては、下記ページを参照ください。
財務会計と税務会計の違い | 考え方

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した利益≒所得、収益≒益金、費用≒損金

 

 

財務会計の収益と税務会計の益金との違い

収益、益金ともに売上などの収入金額のことをいいます。多くの項目は収益になるものは益金にもなり、益金になるものは収益にもなりますが、そうはならないものもあります。

 

財務会計上は収益になるけど、税務会計上は益金にならないものを 「 益金不算入項目 」 といいます。具体例としては受取配当金、資産評価益、税金の還付金といったものの一部が該当します。

その逆に、財務会計上は収益にならないけど、税務会計上は益金になるものを 「 益金算入項目 」 といいます。具体例としては資本剰余金として処理された国庫補助金などが該当します。

 

収益に益金算入項目をプラスして益金不算入項目をマイナスすると益金になります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した益金=収益+益金算入-益金不算入

 

 

財務会計の費用と税務会計の損金との違い

費用 ( 損失 ) 、損金ともに収益をあげるためにかかった経費や突発的に発生した損失のことをいいます。多くの項目は費用 ( 損失 ) になるものは損金にもなり、損金になるものは費用 ( 損失 ) にもなりますが、そうはならないものもあります。

 

財務会計上は費用になるけど、税務会計上は損金にならないものを 「 損金不算入項目 」 といいます。具体例としては交際費や減価償却費、役員賞与などで税務上の限度額を超えたものや、財務会計上は費用として処理した税金の一部、罰金などが該当します。

その逆に、財務会計上は費用にならないけど、税務会計上は損金になるものを 「 損金算入項目 」 といいます。具体例としては繰越欠損金などが該当します。

 

費用 ( 損失 ) に損金算入項目をプラスして、損益不算入項目をマイナスすることで損金になります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した損金=費用損失+損金算入-損金不算入

 

 

税務会計の所得の計算方法

税務会計における所得は、益金から損金を差引いて計算しますが、イチから益金と損金を集計するのは手間がかかります。そこで、財務会計における利益に、「 益金算入項目 」 と 「 損金不算入項目 」 をプラスして、「 益金不算入項目 」 と 「 損金算入項目 」 をマイナスすることで所得を計算します。

この利益から所得を求める計算を、法人税申告書の別表四 「 所得の金額に関する明細書 」 で行うことになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した所得=利益+益金算入+損金不算入-益金不算入-損金算入

 

日頃の会計帳簿の作成 ( 記帳 ) を税務会計にもとづいて行えば、利益から所得を求める計算に用いる項目は少なくて済みます。そのため、中小企業においては財務会計ではなく税務会計が主流になっています。しかし、税務会計の目的はあくまで税金の計算にあって適正な財務報告には向いていません。ファンドからの出資や、株式上場、M&Aなど外部からの投資を呼びこむことをお考えの場合は、なるべく早い段階から財務会計による記帳をする必要があります。

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で起業された方、または起業をお考えの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、あなたの会社の持続的な発展のお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

黒字倒産とは?利益あるけどキャッシュがない

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として、港区や渋谷区、新宿区といった東京23区において、起業やベンチャー企業の支援してきた経験から、会社を発展させるための心強い武器になるファイナンスについて解説します。

今回は、黒字倒産について説明したいと思います。

 

 

黒字倒産とは

黒字倒産とは、文字通り黒字であるにもかかわらず倒産してしまうことをいいます。

 

黒字とは、収入が支出を上回っている状態のことをいいます。
赤字とは、黒字とは逆に、支出が収入を上回っている状態のことをいいます。
黒字・赤字という言葉は色んな場面で使われますが、黒字倒産という場合の黒字とは、会計上は利益が出ている状態を指します。

 

倒産とは、会社が借入金や仕入代金といった債務の支払ができなくなり、会社としての活動を続けていけなくなった状態になることをいいます。

 

「黒字なのに倒産?」

黒字と倒産、利益が出ているのに債務を返せない、一見すると矛盾したことを言っているように感じますよね。

 

 

なぜ黒字倒産が起こるのか

それでは、黒字倒産はなぜ起こってしまうのでしょうか。

それは、実際の現金の出入りのタイミングと、会計上の利益を計上するタイミングがズレていることが原因で、利益が出ているけれどもキャッシュ ( 現金 ) がない状態になってしまうことで起こってしまうのです。

黒字倒産の具体的な数値例を見てみましょう。

 

 

黒字倒産の数値例(商品在庫)

商品在庫を原因とする黒字倒産の数値例です。

20X1年のA社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

  1. 1個1万円の商品を100個仕入れました。
  2. 仕入れた商品のうち40個を2万円で売りました。
  3. 仕入れ代金100万円を支払いました。
  4. 売上代金80万円を受け取りました。

 

20X1年のA社の損益計算書 ( P/L ) はこうなります。
売上高 = 2万円 × 40個 = 80万円
売上原価 = 1万円 × 40個 = 40万円
利益 = 売上高80万円 - 売上原価40万円 = 40万円

利益が40万円、立派な黒字企業ですね。

 

次に、20X1年のA社のキャッシュ・フロー計算書 ( C/F ) を見てみましょう。
営業収入 = 2万円 × 40個 = 80万円
商品仕入支出 = 1万円 × 10個 = 100万円
現金の増減額 = 営業収入80万円 - 商品仕入れ支出100万円 = ▲20万円

利益が40万円出ているのに、現金は20万円もマイナスになっています。

 

利益を計算する損益計算書では、仕入れた商品は売れない限り売上原価になりません。
しかし、現金の増減を計算するキャッシュ・フロー計算書では、仕入れた商品は売れなくても代金を支払っているのであれば商品仕入支出になります。
商品在庫の取り扱いが、利益の計算と現金収支では異なってくるのです。

このような状態が続いて、会社の現金が底をついてしまうと黒字倒産になってしまいます。

 

 

黒字倒産の数値例(資金繰り)

資金繰りを原因とする黒字倒産の数値例です。

 

20X2年のB社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

現金は70万円あります

  1. 1個1万円の商品を50個仕入れました。→現金残高70万円、20X2年利益累計▲50万円
  2. 仕入れた商品50個を2万円で売りました。→現金残高70万円、20X2年利益累計50万円
  3. 仕入れ代金50万円を支払いました。→現金残高20万円、20X2年利益累計50万円
  4. 売上代金100万円を受け取りました。→現金残高120万円、20X2年利益累計50万円
  5. 1個1万円の商品を150個仕入れました。→現金残高120万円、20X2年利益累計▲100万円
  6. 仕入れた商品100個を2万円で売りました。→現金残高120万円、20X2年利益累計100万円
  7. 仕入れ代金150万円を支払いました。現金残高→▲30万円、20X2年利益累計100万円

 

20X3年のB社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

  1. 売上代金200万円を受け取りました。現金残高→170万円、20X3年利益累計0万円

 

7.において仕入れ代金150万円を支払うのには手もとの現金が30万円足りません。
売上代金200万円を受け取るのはまだ先です。借入などによって30万円を用意できないと黒字倒産になります。

 

一般的なビジネスおいては、仕入れ代金の支払いの方が、売上代金の入金よりも先にきます。そのため資金繰りが必要になってきます。

その逆に、飲食業など現金商売といわれるビジネスの場合は、売上代金の入金の方が、仕入れ代金の支払いよりも先にくるので、資金繰りは楽といわれています。

 

 

黒字倒産を防ぐには

黒字倒産を防ぐためには、利益だけでなくキャッシュ ( 現金 ) にも注意を払うことです。

決算ではキャッシュ・フロー計算書を作成して、過去1年間の現金の動きを把握します。そして期中においては、資金繰り表などを作成して将来の現金の出入りを予測、資金需要に対して十分時間をもって対応できるようにしてください。

利益に比べるとキャッシュの管理はおろそかになりがちですが、キャッシュは利益よりも大切です。そのことをいつも頭において、利益の損得勘定だけでなく、キャッシュの時系列勘定できるようにしてくださいね。

 

 

おわりに

「勘定あっても銭足らず」、まさに黒字倒産を表す言葉ですね。キャッシュフロー経営というものが流行ったのは昔の話ですが、廃れたワケではありません。なくてはならないものに昇華したといえると思います。しつこいですが、利益よりも現金を大切にしてくださいね。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で、ベンチャー企業や起業をお考えのお客様がおりましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、あなたの会社の企業価値を高めるお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
税金や節税、起業などについて、皆様のお役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしかったら情報の一覧もご覧ください。

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