顧問料0円無料税理士のカラクリ

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

先日、同業で友人の税理士たちと食事をしているときに話題にあがったのが顧問料0円税理士についてです。

今回は、そんな毎月の顧問料が無料の税理士のカラクリについ解説したいと思います。

 

税理士業界にもFree-フリー戦略がやってきた

数年前のクリス・アンダーソンの「フリー無料からお金を生みだす新戦略」という書籍でも話題になったFree-フリー戦略ですが、こが税理士業界にもやってきたようです。

フリー戦略とは、簡単に言うと、本来であれば有料でもおかしくない商品やサービスを、集客目的で無料で提供することで顧客を惹きつけて、惹きつけられた顧客に有料の商品を提供するビジネスモデルのことです。マーケティング用語でいうと、無料のフロントエンド商品で見込み客を誘い、有料のバックエンド商品で稼ぐ方法です。

これを税理士業界に当てはめると、顧問料無料で顧客を集めて、他の業務で稼ぐことになります。

 

顧問料が0円の税理士はやっていけるの?

顧問料が0円の税理士はやっていけるのでしょうか。心配ありません、やっていけます。上記で書いたとおり、顧問料以外の他の業務で稼ぐからです。顧問料が無料であるため、他の業務の料金については一般の税理士より高く設定されていることが多いです。

例をあげてみると、下表のようになります。

顧問料0円の税理士 普通の税理士
顧問料 0円 月20,000円 × 12か月 = 240,000円
会計帳簿作成料(記帳代) 月15,000円 × 12か月 = 180,000円 月10,000円 × 12か月 = 120,000円
決算料 200,000円 80,000円
資料作成(年末調整、法定調書、償却資産税など) 100,000円 30,000円
1年間に税理士に支払う総額 480,000円 470,000円

結果として顧問料0円税理士の方が高くついてしまっていますね。

この例は私が恣意的に顧問料0円税理士の方が高くなるように作成したものではありますが、税理士選びに顧問料0円税理士を検討されている方は、1年間にトータルでいくら税理士に支払うのかをしっかり見積もりを取ってみてください。そうすると思ったより安くないことが分かるはずです。

それ以外にも、顧問料が無料なのは顧問契約後3~6か月のみで、しかも顧問契約については1年などの縛りがあって途中解約できないパターンもよく見られます。この場合も、無料期間が切れたあとの1年間に発生する税理士への支払いを把握する必要があります。

しつこいようで恐縮ですが、税理士への支払いは毎月の金額だけを見るのではなく、1年間トータルの金額で考えてくださいね。

 

同業の税理士から見た感想

税理士業界にフリー戦略を持ち込んだことについて、やるなあ、センスあるよ、マーケティング的にはとても上手な宣伝だと、友人税理士たちとともに感心しました。

しかし、私も友人税理士たちも、顧問料無料のフリー戦略を自分の事務所には採用しない、という意見で一致しました。なぜかというと、なんとなくお客様をだましているように感じてしまうからです。こんなふうに思ってしまう私たち税理士は古いのかもしれませんね。

税理士業界の価格破壊は顧客にとってはありがたいことですが、見掛け倒しの価格破壊は税理士業界に対する信頼を失ってしまいます。

 

おわりに

このフリー戦略を知っている税理士はどれくらいいるでしょうか。税理士にとってもマーケティングの知識は大切です。顧客へのアドバイスの幅が広がりますし、自分の税理士事務所の運営にも関わってきます。

もちろん、マーケティングを本業にするわけではありません。マーケティングのプロフェッショナルの方の知識が100だとすると、税理士は5もあれば十分です。しかし知識ゼロと知識5では大きな違いがあります。税理士もマーケティングについての話を顧客とできるくらいの知識を持ちたいですね。

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

貸借対照表-決算日における資金の調達先と資金の運用状況を表します

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

経営者にとって貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書といった財務諸表の3表の知識は必須といっていいでしょう。もちろん勘定科目など細かいところまで覚える必要はありません。ポイントだけ押さえれば十分です。

今回は、経営者が理解すべき貸借対照表の概要について説明したいと思います。

 

貸借対照表

貸借対照表とは、決算日という一時点における資金の調達先と、その調達した資金の運用状況を表した表です。B/Sとかバランスシート(Balance Sheet)とも言われています。私のまわりの公認会計士や税理士は、語数が少ないからなのかB/S(ビーエス)と言う人が多いですね。

 

貸借対照表の借方と貸方

貸借対照表は左右に分かれていて、
貸方と言われる右側に、資金をどこからどうやって調達してきたのかを表す負債と資本を示しており、
借方と言われる左側に、調達した資金をどうやって運用しているかを表す資産を示しています。

資産の金額は負債と資本の合計の金額と一致します。式で表すとこうなります。

資産=負債+資本

このように左右の金額が常に一致している、バランスしている関係にあるためバランスシートと呼ばれているのです。

 

貸借対照表で見る資金の流れ

事業活動における資金の流れを貸借対照表で見てみると下図のようになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した貸借対照表の図1

自己資本として株主から出資を受けた資金、他人資本として銀行などから借入金として調達した資金を元手に、材料や商品などを仕入れたり、機械などの設備投資を行ったり、従業員に給料を払ったりします。

そして売上として顧客に商品やサービスを提供することでお金(資金)が入ってきます。

その資金を借入金の返済や利払いに充てたり、株主配当などで資金の提供者に還元したり、新たな仕入れや設備投資に使います。

この一連の流れを事業活動として繰り返していくことになるのですが、貸借対照表はこの事業活動の一時点における状況を写真で撮ったスナップショットのように表しているのです。

 

貸借対照表のまとめ

貸借対照表とは、決算日における資金の運用状況を資産として左側の借方に、資金の調達先を負債と資本として右側の貸方に示している表であり、資産の金額と負債+資本の金額は常に一致しています。

 

損益計算書については、「損益計算書-1年間の経営成績を表します」を参照ください。
キャッシュ・フロー計算書については、「キャッシュ・フロー計算書-現預金の増減理由が分かります」を参照ください。

 

おわりに

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

節税と現在価値-支払いを将来に繰り延べるだけの節税も意味があります

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

節税とファイナンス用語の現在価値、一見するとあまり関係がないように思えますが、実はけっこう関係があります。

今回は、そんな節税と現在価値の関係について説明したいと思います。

 

支払いを将来に繰り延べるだけの節税

節税には、税金の額を減らすのではなく、税金の支払いを将来に繰り延べるだけに過ぎない節税というものが多くあります。税金の額を減らすものではないので、この手の節税には意味が無いという税理士さんもいらっしゃいます。

100万円の税金の支払いを50万円に減らしました。これは立派な節税ですね。

100万円の税金の支払いを1年後に繰り延べました。これは節税と言えるのでしょうか。

 

繰り延べるだけの節税も現在価値で考える

私は、支払いを将来に繰り延べるだけの節税についても、現在価値で考えると意味があると思っています。

現在価値については「1年後に100万円もらうよりも今100万円欲しい-現在価値」を参照ください。

現在価値で考えると、現在の100万円の税金の支払いよりも、1年後の100万円の税金の支払いの方が少なくて済みます。1年後ではなく5年後、10年後で考えるとその影響額はもっと大きくなります。

割引率を10%と仮定して試算してみたのが下表です。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した節税現在価値の図

現在の100万円の税金を1年後に繰り延べると現在価値にして91万円、5年後に繰り延べると現在価値にして62万円、10年後に繰り延べると現在価値にして39万円になるのです。

起業して間もないフリーランスや個人事業主、中小企業やベンチャー企業であれば割引率はもっと高くなると思うので、その影響額はさらに大きくなるでしょう。

 

繰り延べるだけの節税と資金繰り

支払いを将来に繰り延べるだけの節税については、現在価値で考えなくても意味はあります。それは資金繰りです。資金繰りの基本は、受け取るお金はなるべく早く、支払うお金はなるべく遅くです。同じ税金の支払いなら先延ばしにしたほうが、資金繰りは楽になりますね。

 

おわりに

支払いを将来に繰り延べるだけの節税について、

  • 特に何も考えずに実行するのが普通の税理士です。
  • 税金の額が減るわけではないことを顧客に説明して実行するのが良い税理士です。
  • 税金の額が減るわけではないが、メリットがちゃんとあることを顧客に説明して実行するのがさらに良い税理士です。

現在価値の概念について、公認会計士は退職給付引当金の検証など仕事で使う場面が多いので知っていますが、税理士にはなかなか馴染みがないと思います。節税だけでなく、このようなコーポレートファイナンスの相談もしたい場合は税理士よりも公認会計士の方が合っているかもしれません。

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

1年後に100万円もらうよりも今100万円欲しい-現在価値

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、ファイナンスにおいてもっとも基本かつ重要な概念である現在価値について説明したいと思います。

 

今のお金と将来のお金

あなたは、とある会社のキャンペーンで懸賞金が当たりました。今のお金と将来のお金、どちらを選びますか?

A : 今すぐに100万円をもらえる
B : 1年後に100万円をもらえる

ほとんどの人はAを選ぶと思います。

Aを選んだ理由としてはこんな感じでしょうか。

  • 1年後では、その会社が倒産してしまうなどのアクシデントで100万円がもらえないかもしれない。
  • 今すぐに100万円をもらって、その100万円を投資すれば1年後には100万円以上になっているかもしれない。

このように、人は将来のお金よりも今のお金の方が価値があると思っているのです。

今の100万円>1年後の100万円

では、これならどちらを選びますか?

A : 今すぐに100万円がもらえる
C : 1年後に103万円がもらえる

これならどうでしょう

A : 今すぐに100万円がもらえる
D : 1年後に110万円がもらえる

さらに

A : 今すぐに100万円がもらえる
E : 1年後に150万円がもらえる

はじめのAとBの比較とは違って、どちらを選ぶかは人それぞれになるのではないでしょうか。

これは、人によって現在の価値とイコールになる将来の価値が異なることを示しています。

 

現在価値と割引率

少し視点を変えてみて
次の□に入る金額はいくらですか?

今すぐに100万円がもらえる = 1年後に□もらえる

ある人の□に入る金額が110万円だと仮定します。

今すぐに100万円がもらえる = 1年後に110万円もらえる

この人にとっては1年後の110万円と今の100万円が同価値であることになります。

この関係を数式で表すと

110 ÷ ( 1 + x ) = 100
x = 0.1

このときの0.1を割引率と言います。
将来の金額を1+割引率で割ると現在の金額になります。言い換えると、将来価値を割引率で割り引くと現在価値になるのです。

この割引率というのは、一律に決まっているものではなく、時や場所、人によって様々な値になります。

 

現在価値と将来価値、割引率と利率

現在価値と将来価値、割引率の関係を、皆さんにも馴染みのある利率(金利、利回り、収益率)を使って表すとこのようになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した現在価値の図

このように現在価値と将来価値、割引率と利率は、表と裏の関係にあります。頭が混乱したら、この図を思い出してみてください。

 

現在価値

あらためて現在価値とは、発生する時が異なる金額的な価値について、今現在という同じ土俵で比較するために、割引率を使って将来価値を今現在の時点まで割り引いて計算された価値のことを言います。PV(present value)とも言います。

将来価値 ÷ ( 1 + 割引率 ) = 現在価値
現在価値 × ( 1 + 利率 ) = 将来価値

現在価値は、ファイナンスにおいて、もっとも基本であり、もっとも重要な概念になります。

ファイナンスの最大の目的は企業価値の最大化です。現在価値を理解することは、資金調達や投資意思決定、資本構成などビジネスの重要な場面において役に立つでしょう。

 

おわりに

現在価値の概念について、公認会計士は退職給付引当金の検証など仕事で使う場面が多いので知っていますが、税理士にはなかなか馴染みがないと思います。節税だけでなく、このようなコーポレートファイナンスの相談もしたい場合は税理士よりも公認会計士の方が合っているかもしれません。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

プロスペクト理論-得するよりも損を避けたい

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

経済学において、人は経済合理的な行動をとる経済人であるという前提があります。しかし、実際には人は不合理な行動をとってしまうことがよくあります。

今回は、そんな人の不合理な行動を説明するプロスペクト理論というものを紹介したいと思います。

 

どっちの宝くじを選びますか?

みなさんならどちらの宝くじを選びますか?

A : 必ず10万円が当たる
B : 70%の確率で15万円が当たるけど、30%の確率で0円になる

この場合、Aを選ぶ人が多いのではないでしょうか。
期待値で考えると、Aの10万円よりも、Bの10.5万円(15万円×70%+0円×30%)の方がもらえる金額が多いため、経済合理的にはBが正しいといえます。

宝くじの金額が増えて、下記のようになると

AA : 必ず100万円が当たる
BB : 70%の確率で150万円が当たるけど、30%の確率で0円になる

AAを選ぶ人はさらに増えるそうです。

 

どっちの罰金を払いますか?

みなさんならどちらの罰金を払いますか?

C : 必ず10万円を支払わなければならない
D : 70%の確率で15万円を支払わなければならないが、30%の確率で0円になる

この場合、Dを選ぶ人が多いのではないでしょうか。
期待値で考えると、Cの10万円の方が、Dの10.5万円(15万円×70%+0円×30%)よりも支払う金額が少ないため、経済合理的にはCが正しいといえます。

罰金の金額が増えて、下記のようになると

CC : 必ず100万円を支払わなければならない
DD : 70%の確率で150万円を支払わなければならないが、30%の確率で0円になる

DDを選ぶ人はさらに増えるそうです。

 

プロスペクト理論

上記の宝くじの例のとおり、利益を得ることができる場面では危険から回避するように行動する、つまり損をする確率を高く見積もってしまいます。そして、金額が大きくなるほどその傾向は強くなります。

上記の罰金の例のとおり、損を被ってしまう場面では危険を追求するように行動する、つまり得をする確率(損から免れる確率)を高く見積もってしまいます。そして、金額が大きくなるほどその傾向は強くなります。

人は、絶対値が同じ額の利益と損失であっても、損失の方を大きく感じてしまうようです。100万円を得たいという思いよりも、100万円の損をしたくないという思いの方が強いのです。勝ちたい思いよりも、負けたくない思いの方が強い人が多いとも言えます。

このような人の不合理な行動を説明した理論をプロスペクト理論と言います。

株式投資で損切りできない、不採算事業から撤退できないなどの行動は、このプロスペクト理論で説明できます。

 

おわりに

ビジネスにおける意思決定はもちろん、日常生活における意思決定においても、このプロスペクト理論を思い出して、不合理な行動をとっていないかどうか意識してみてください。
とは言え、この理論を知っていても、不合理な行動をとってしまうことがある自分はまだまだ経済人とは言えませんね。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

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