逓増定期保険 | 法人が加入する保険の経理と税金

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区や渋谷、新宿など東京23区のベンチャー企業や起業家様を支援している公認会計士・税理士が、会計や税金節税などについて解説します。

 

今回は、株式会社などの法人が加入する逓増定期保険に関する経理処理と税金について説明したいと思います。

 

 

 

逓増定期保険とは

定期保険とは、一定の保険期間内に被保険者がお亡くなりになった場合にだけ死亡保険金を受け取ることができる生命保険のことをいいます。

逓増定期保険とは、死亡保険金の額が増えていく定期保険のことをいいます。「逓増」とは、「数量がしだいに増えていく」ことです。

 

 

法人が加入する逓増定期保険とは

株式会社などの法人が加入する逓増定期保険とは、
法人が契約者になって、社長などの会社役員や従業員を被保険者とする逓増定期保険のことをいいます。

解約返戻率 ( 解約返戻金 ÷ 支払った保険料の総額 ) が高いことから、社長など会社役員の退職金に充てるためなどに利用されます。

 

 

法人が逓増定期保険に加入する目的

法人が逓増定期保険に加入する主な目的として次のようなものが挙げられます。

 

役員退職金に充てるため
経営者などの退職時期に、解約返戻率( 解約返戻金 ÷ 支払った保険料の総額 )のピークがくるように、逓増定期保険を設計することで、解約返戻金を役員退職金に充てることができます。

長期平準定期保険などに比べて、早い時期に解約返戻率のピークがきます。役員退職金に充当する保険としてどちらに加入するのかは、被保険者の年齢や保険加入期間などに応じて検討することになります。

 

節税のため
税法上の逓増定期保険に該当するように保険設計すれば、支払った保険料の一部が損金(税金を計算する上で経費として認めてもらえること)になるので節税にも利用できます。

 

その他
保険の本来の目的である万が一の事態に備えるという死亡保障によって、資金繰りや事業承継などに備えることができます。

 

 

税務上の逓増定期保険

税務上の逓増定期保険とは、
保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち、
その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超える
保険をいいます。

 

 

逓増定期保険の税務上の取扱いと経理処理

法人が加入する逓増定期保険の税務上の取扱いと経理処理は、保険金の受取人が法人の場合、保険契約の内容によって次の3つに区分されます。

 

逓増定期保険タイプA

保険期間満了の時における被保険者の年齢 > 80歳、
かつ、
保険加入時の被保険者の年齢 + 保険期間 × 2 > 120

 

保険期間の前半の6割の期間(保険期間が40年であれば前半の24年)
支払った保険料の「3/4」を、前払保険料として資産に計上します。
支払った保険料の残りの「1/4」を、支払保険料として損金(経費)に計上します。

 

保険期間の後半の4割の期間(保険期間が40年であれば後半の16年)
支払った保険料の全額を損金(経費)に計上します。
保険期間の前半6割の期間に前払保険料として資産計上していたものを、保険期間の経過に応じて損金(経費)に振り替えます。

 

逓増定期保険タイプAの経理処理の例

保険契約者・・・法人
保険金受取人・・・法人
被保険者・・・代表取締役
被保険者の保険加入時の年齢・・・45歳
保険期間・・・40年(保険期間満了時の被保険者の年齢・・・85歳)
年間の支払い保険料・・・1,000,000円

保険期間満了の時における被保険者の年齢「85歳」 > 80歳
かつ、
保険加入時の被保険者の年齢「45歳」 + 保険期間「40年」 × 2 > 120
よって逓増定期保険タイプAに該当

 

保険期間の前半の6割の期間(加入時から24年目までの24年間)

年間の支払い保険料1,000,000円のうち
「3/4」の750,000円は前払保険料(資産)になります。
残りの「1/4」の250,000円は支払保険料(経費)になります。

 

保険期間の後半の4割の期間(25年目から40年目までの16年間)

年間の支払保険料1,000,000円は、その全額が支払保険料(経費)になります。
保険期間の前半6割の期間で前払保険料(資産)として計上されていた18,000,000円(750,000円×24年間)を、年間1,125,000円(18,000,000円÷16年間)ずつ支払保険料(経費)に振り替えていきます。

 

 

逓増定期保険タイプB

保険期間満了の時における被保険者の年齢 > 70歳、
かつ、
保険加入時の被保険者の年齢 + 保険期間 × 2 > 95
ただし、上記のタイプAに該当するものは除く

 

保険期間の前半の6割の期間(保険期間が30年であれば前半の18年)
支払った保険料の「2/3」を、前払保険料として資産に計上します。
支払った保険料の残りの「1/3」を、支払保険料として損金(経費)に計上します。

 

保険期間の後半の4割の期間(保険期間が30年であれば後半の12年)
支払った保険料の全額を損金(経費)に計上します。
保険期間の前半6割の期間に前払保険料として資産計上していたものを、保険期間の経過に応じて損金(経費)に振り替えます。

 

逓増定期保険タイプBの経理処理の例

保険契約者・・・法人
保険金受取人・・・法人
被保険者・・・代表取締役
被保険者の保険加入時の年齢・・・45歳
保険期間・・・30年(保険期間満了時の被保険者の年齢・・・75歳)
年間の支払い保険料・・・900,000円

保険期間満了の時における被保険者の年齢「75歳」 > 70歳
かつ、
保険加入時の被保険者の年齢「45歳」 + 保険期間「30年」 × 2 > 95
よって逓増定期保険タイプBに該当(タイプAには該当しない)

 

保険期間の前半の6割の期間(加入時から18年目までの18年間)

年間の支払い保険料900,000円のうち
「2/3」の600,000円は前払保険料(資産)になります。
残りの「1/3」の300,000円は支払保険料(経費)になります。

 

保険期間の後半の4割の期間(19年目から30年目までの12年間)

年間の支払保険料900,000円は、その全額が支払保険料(経費)になります。
保険期間の前半6割の期間で前払保険料(資産)として計上されていた10,800,000円(600,000円×18年間)を、年間900,000円(10,800,000円÷12年間)ずつ支払保険料(経費)に振り替えていきます。

 

 

逓増定期保険タイプC

保険期間満了の時における被保険者の年齢 > 45歳
ただし、上記のタイプAまたはタイプBに該当するものは除く

 

保険期間の前半の6割の期間(保険期間が10年であれば前半の6年)
支払った保険料の「1/2」を、前払保険料として資産に計上します。
支払った保険料の残りの「1/2」を、支払保険料として損金(経費)に計上します。

 

保険期間の後半の4割の期間(保険期間が10年であれば後半の4年)
支払った保険料の全額を損金(経費)に計上します。
保険期間の前半6割の期間に前払保険料として資産計上していたものを、保険期間の経過に応じて損金(経費)に振り替えます。

 

逓増定期保険タイプCの経理処理の例

保険契約者・・・法人
保険金受取人・・・法人
被保険者・・・代表取締役
被保険者の保険加入時の年齢・・・40歳
保険期間・・・10年(保険期間満了時の被保険者の年齢・・・50歳)
年間の支払い保険料・・・1,000,000円

保険期間満了の時における被保険者の年齢「50歳」 > 45歳
よって逓増定期保険タイプCに該当(タイプAとタイプBには該当しない)

 

保険期間の前半の6割の期間(加入時から6年目までの6年間)

年間の支払い保険料1,000,000円のうち
「1/2」の500,000円は前払保険料(資産)になります。
残りの「1/2」の500,000円は支払保険料(経費)になります。

 

保険期間の後半の4割の期間(7年目から10年目までの4年間)

年間の支払保険料1,000,000円は、その全額が支払保険料(経費)になります。
保険期間の前半6割の期間で前払保険料(資産)として計上されていた3,000,000円(500,000円×6年間)を、年間750,000円(3,000,000円÷4年間)ずつ支払保険料(経費)に振り替えていきます。

 

 

保険金の受取人が役員や従業員の遺族の場合

保険金の受取人が役員や従業員の遺族の場合は、損金になる金額を、支払保険料ではなく福利厚生費で処理します。(損金になる金額は変わりません)

特定の役員や従業員だけを被保険者にしている場合は、上記にかかわらず、支払った保険料の全額が、その役員や従業員に対する給与とされるのでご注意ください。

 

 

おわりに

逓増定期保険に似た機能を持つ長期平準定期保険というものもあります。法人で保険の加入をお考えの場合は、保険会社だけでなく税理士ともよく相談して下さいね。

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
税金や節税、起業などについて、皆様のお役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしかったら情報の一覧もご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。