カテゴリー: 税金と節税

少額減価償却資産の特例をつかった節税(フリーランス・個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、フリーランス、個人事業主、法人の方の少額減価償却資産の特例をつかった節税を紹介します。

 

 

少額減価償却資産の特例の概要

取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成15年4月1日から平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を、その年の必要経費、損金にすることができます。

12月が決算月とすると、通常は12月に減価償却資産を購入しても、12月の1ヶ月分しか減価償却費の計上ができません。しかし、少額減価償却資産の特例をつかえば、30万円未満の少額減価償却資産を購入した場合、その全額を必要経費にすることができます。もちろん、節税になるからといって、いらないモノまで購入する必要はありません。もともと購入の予定があったモノであれば、前倒しで購入することで、利益が出すぎてしまった年の利益を減らして節税することができます。

 

 

少額減価償却資産の特例を受けることができるフリーランス・個人事業主、法人

青色申告をしているフリーランス、個人事業主、資本金1億円以下などの法人の方が少額減価償却資産の特例を受けることができます。

白色申告をしているフリーランス、個人事業主、法人の方はこの特例はつかえません。

 

 

平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合

平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合とは、購入しただけではダメで、実際に使い始めていないと、少額減価償却資産の特例はつかえないということです。12月末ギリギリに機械を買って、使わずに寝かせている場合などは対象外になってしまいます。パソコンを10台買って、そのうち6台については買った年から使用しているが、4台は使用していない場合、6台のみが少額減価償却資産の特例の対象になります。

なお、平成26年3月31日までとありますが、平成28年3月31日までに延長される予定です。

 

 

少額減価償却資産の特例の適用対象となる資産

取得価額が30万円未満の減価償却資産です。取得価額が30万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定します。構築物のうち例えば枕木、電柱など単体では機能を発揮できないものについては、社会通念上一の効用を有すると認められる単位ごとに判定します。

消費税の経理処理の方法によって、税込みで経理処理している場合は税込みで30万円未満かどうか判定して、税抜きで経理処理している場合は税抜きで30万円未満かどうか判定します。消費税の免税事業者の場合は、税込みで30万円未満かどうか判定します。

 

 

1年あたりの合計額が300万円に達するまでが、その年の限度です

その年において、複数の少額減価償却資産を取得してして事業の用に供した場合には、合計額が300万円に達するまでの分が、少額減価償却資産の特例の対象となります。

1年間で24万円のパソコンを14台買った場合、12台(24万円×12台=288万円)は、全額その年の必要経費になりますが、残りの2台については減価償却の手続きにより、そのうちの一部のみしか、その年の必要経費になりません。300万円までの全額が必要経費になるのではなく、300万円に達するまでの台数で計算します。

開業年など青色申告の月数が12か月より少ない場合は、300万円×(青色申告月数 / 12か月)が上限になります。

 

 

経理処理

経理処理については、消耗品費などで購入時に経費処理するのではなく、購入時はいったん資産として計上してから、決算で全額を減価償却費として計上しましょう。

忘れやすいポイントですが、少額減価償却資産の特例の適用を受けた資産は、その年に全額必要経費、損金になったとしても、地方税である償却資産税は課税されます。

10万円未満の少額減価償却資産として損金計上した場合や、一括償却資産として3年間で損金算入する方法を選択した場合には、償却資産税は課税されませんので、どの方法により損金算入するかの比較検討も必要となります。

 

 

少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))を添付して申告(法人)

少額減価償却資産の特例を受けるためには、事業の用に供した事業年度において、少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき損金経理するとともに、確定申告書等に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))」を添付して申告することが必要です。

 

 

少額減価償却資産の明細書を提出(フリーランス、個人事業主)

少額減価償却資産の特例を受けるためには、確定申告の際に、「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を合わせて提出しなければなりません。しかし、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に次の事項を書いて提出して、かつ、この減価償却資産の明細を保管している場合は、「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」の提出を省略することができます。

  1. 取得価額30万円未満の減価償却資産について、措置法第28条の2第1項の規定を適用していること
  2. 適用した減価償却資産の取得価額の合計額
  3. 適用した減価償却資産の明細は、別途保管していること

 

 

その他の注意点

この特例は、研究開発税制を除き、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。

取得価額が10万円未満のものについては、この特例の適用はありません。この特例を使わなくても、そもそも必要経費、損金にすることができます。そして、10万円未満のものは、消耗品費などで処理してかまいません。

一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについても、この特例の適用はありません。

この特例は取得価額が30万円未満の減価償却資産について適用されるので、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権などの無形減価償却資産も対象になりますし、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産も対象となります。

 

 

まとめ

利益がいっぱい出ちゃいそうだなと思ったら、30万円未満の減価償却資産を購入して必要経費、損金に計上しましょう。ただし、買っただけではダメです。買った年に使い始めないといけません。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

役員社宅(会社所有)で節税しよう(法人)

はじめに

家が好きな東京都港区の税理士
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、会社が住居を所有して、それを社宅にすることで節税する方法を紹介します。賃貸物件による社宅の節税については、賃貸物件の役員社宅で節税しよう(法人)を参照下さい。

これからマンションなどの住居の購入を考えている会社経営者の方は、個人で所有するのではなく、会社で購入してそれを社宅として経営者ご自身にお貸しすることを考えてみてください。会社で所有することにより、法人税や相続税を節税することができる場合があります。

 

 

役員社宅(会社所有)による節税の概要

個人で住居を購入しても、住宅ローンの金利や、固定資産税、減価償却費などを所得税における必要経費にできませんが、会社で購入することでこれらの経費を法人税における損金することができるのです。会社の損金にできるということは、その分会社の儲けが減り、税金を減らせることになるのです。

 

 

会社で社宅を所有するメリット

会社名義で住居を購入、その物件を役員社宅として経営者に貸します。会社で住居を購入した場合、借入金の利息、不動産取得税、登記料、印紙、固定資産税、修繕費などの費用を会社の経費として税務上損金にすることができます。時の経過とともに住居の価値の下がりますが、その減価分を減価償却といった手続きで会社の損金にすることもできます。

会社ではなく個人で住居を購入した場合、これらの住居にかかる経費は法人税上の会社の損金にならないのはもちろん、個人における所得税の必要経費にもなりません。

経営者が亡くなったときに相続が発生しますが、住居について、会社が社宅として社宅を所有しているのと経営者自らが所有するのでは、前者の方が相続税における評価額が安くなり相続税を節税できる場合が多いです。しかし、かならず節税できるとは限らないので、相続対策で社宅を購入する場合は必ず税理士と相談して下さい。

 

 

経営者が会社に支払う家賃

経営者は会社に家賃を支払わなければなりません。

経営者は国税庁が定めた「一定の家賃」以上の額を会社に支払うことで、税務署に社宅であると認めてもらえます。この定められた額より少ないと、役員報酬とみなされ税金上損をしてしまうので注意が必要です。

家賃を払わなければいけないならメリットなんてないじゃないか、と思われるかもしれませんが、経営者が会社に支払わなければならない家賃は家賃相場に比べて非常に安い金額となっているのです。この「一定の家賃」を算出すると、だいたい家賃相場の20%ほどになります。つまり、家賃相場の20%ほどの家賃を会社に支払うだけで、住居の支払利息や固定資産税、減価償却費を会社の損金とすることができるのです。

社宅が社会通念上社宅と認められないような豪華社宅にあたるときは、次の算式ではなく、時価が賃貸料相当額なります。豪華社宅に該当する場合は、社宅をつかった節税はできません。豪華社宅とは、例えば240平方メートルを超えた広すぎる場合や、そこまで広くなくてもプールがある場合などが該当します。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)以下の場合

次の1,2,3の合計額

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)を超える場合

次の1,2の合計額の12分の1

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×10%(木造等の場合は12%)
  2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

 

会社で社宅を所有するデメリット

住宅ローンを利用して個人で住居を購入した場合は、住宅ローン控除という税金のメリットがあり所得税を減らすことができます。会社で購入すると、住宅ローン控除は受けられません。

借入の条件は個人よりも法人の方が不利になることが多いです。個人であれば条件の良い(金利が低い)住宅ローンを組むことができますし、フラット35も利用できます。法人では住宅ローンが組めないので、住宅ローンよりも条件の悪い(金利が高い)不動産担保融資などで借りることになります。

 

 

売るときのこと考える

会社所有での社宅を検討する場合は、売る時のことまで考えましょう。

 

 

売却益が生じる場合

個人所有では、有名どころだとマイホームを売った時の特例として3,000万円の特別控除があります。条件に合えば家を売って儲かった分のうち3,000万円はチャラにしてあげるよ、という特例があります。

会社所有では、儲かった分はそのまま利益として、法人税法上の益金になり法人税がかかります。
売却益が生じる場合は、個人所有の方が有利と言えます。

 

 

売却損が生じる場合

個人所有では、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例というものがあります。条件に合えば損した分だけ所得税を減らしてあげるよ、という特例です。

会社所有では、損した分はそのまま損失として、法人税法上の損金となり、法人税を減らすことができます。

売却損が生じる場合は、条件のない会社所有の方が有利と言えます。

将来、不動産が値上がりするか値下がりするかは分かりません。そのため、売るときのことを考えて、個人所有か会社所有かを考えるのは難しいですね。

 

 

まとめ

個人で住居を所有するよりも、会社で住居を所有して社宅として貸し付けたほうが節税になることがあります。

しかし、売るときのことを考えると、個人所有と会社所有のどっちが得かは分かりません。

個人的な意見としては、以前紹介した賃貸物件の社宅利用による節税の方をオススメします。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧を参照ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

賃貸物件の役員社宅で節税しよう(法人)

はじめに

こんな家に住みたい東京都港区の税理士こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、社長など会社役員の住居(賃貸物件)を社宅にすることで節税する方法を紹介します。

会社所有の社宅による節税については、役員社宅(会社所有)で節税しよう(法人)を参照ください。

 

 

役員社宅で節税

住居について、社長など会社役員が個人で賃貸借契約をして毎月支払っている住宅の家賃は、所得税を計算するうえで自分の必要経費にもなりませんし、法人税を計算するうえで会社の損金にもなりません。

しかし役員が賃借している住居を、個人ではなく会社が賃貸借契約して、会社の社宅として会社が借りた住居を役員に貸し付けると、会社が支払う家賃と役員から受け取る家賃の差額を損金にすることができます。

住居所有者→貸付→役員というカタチを、

住居所有者→貸付→会社→貸付→役員にするのです。

 

 

賃貸物件の役員社宅の数値例

賃貸物件を役員社宅にした場合について、具体的な数字をつかってみてみましょう。数字はおおまかに試算したものです。

 

 

賃貸物件を役員社宅にしない場合

賃貸物件を役員社宅にしない場合の数値例です。

役員給与50万円
役員の住居の家賃20万円

会社は役員に役員給与として50万円を支払い、その50万円は会社の損金になります。

役員は受け取った役員給与50万円から税金4万円(所得税と住民税の計)と社会保険料7万円(厚生年金と健康保険の計。会社負担分は同額の7万円)がマイナスされて、手取りは39万円。

この39万円から家賃の20万円をマイナスして最後に手もとに残るのは19万円になります。

会社の負担分は役員給与50万円と、役員の社会保険料7万円の合計57万円です。

 

 

賃貸物件を役員社宅にする場合

賃貸物件を役員社宅にする場合の数値例です。

役員給与40万円
役員が会社に払う社宅家賃10万円

役員の住居を法人契約にして、会社が20万円で借りた住居を、役員に10万円で貸します。会社が社宅費用として負担した10万円を役員給与から減らして、40万円を役員給与とします。この役員給与40万円は会社の損金になります。会社が負担した社宅費用の10万円(20万円-10万円)についても会社の損金になります。

役員は受け取った役員給与40万円から税金3万円(所得税と住民税の計)と社会保険料6万円(厚生年金と健康保険の計。会社負担分の同額の6万円)がマイナスされて、手取りは31万円。

この31万円から社宅家賃の10万円をマイナスして最後に手もとに残るのは21万円になります。給与額面が下がったことにより、税金と社会保険料が減って、手もとに残る分は増えています。

会社の負担分は役員給与40万円と役員の社会保険料6万円、社宅10万円の56万円です。社宅にした方が、給与額面が下がり社会保険料が減った分だけ、会社の負担分は減っています。

 

 

賃貸物件を役員社宅にしない場合から役員社宅にした場合の比較

賃貸物件を役員社宅に変更した結果、
役員の手もとに残る分は、19万円から21万円に増えました。
会社が負担する分は、57万円から56万円に減りました。
つまり、役員自身、会社ともにメリットが生まれたことになります。

 

 

賃貸物件を役員社宅にする場合の注意点

賃貸物件を役員社宅にする場合には注意点があります。

 

 

役員から会社に支払う社宅賃料の設定

会社から役員へ無償で貸し付けたり、役員が会社に支払う社宅家賃が低すぎると、税務署は社宅と認めてくれません。税務署に社宅と認めてもらえないと、節税のメリットがまったく発生しないばかりか、社宅にしない場合に比べて追加で余計な税金を払わなければならなくなってしまうこともあります。

社宅の賃料は国税庁の定めた算式にしたがって適正額以上に設定しなければなりません。住宅手当として支給するのもダメです。

ざっくりと家賃の50%以上を役員から徴収していれば税務署も認めてくれるでしょう。しかし、算式にしたがい手間をかけて算定すれば、家賃の50%よりもっと低く、場合によっては役員の負担分を家賃の20%程度まで下げることもできる場合があります。具体的には次の算式で計算された家賃相当額以上の額を役員から会社に支払っていればOKです。

しかし、社会通念上社宅と認められないような豪華社宅である場合は、次の算式の適用はありません。時価が賃貸料相当額になるので豪華社宅に該当する場合は、社宅をつかった節税はできません。豪華社宅とは、例えば240平方メートルを超えた広すぎる場合や、そこまで広くなくてもプールがある場合などが該当します。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)以下の場合

次の1,2,3の合計額(一般的に家賃の50%より低くなるはずです)

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

固定資産税の課税標準額が分からないと計算できないため、その場合は便宜的に家賃の50%以上を役員から徴収しましょう。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)を超える場合

AとBの多い方の額
A:次の1,2の合計額の12分の1

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×10%(木造等の場合は12%)
  2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

B:家賃の50%

 

 

賃貸物件の固定資産税の課税標準額をどうやって調べるのか

固定資産税の課税標準額とは、1月1日における固定資産の価格として固定資産台帳に登録されている額を指します。固定資産課税台帳は市区町村に備え付けられています。例えば東京都港区にあるマンションについて調べたいなら港都税事務所、渋谷区にあるアパートについて調べたいなら渋谷都税事務所、新宿区にある一軒家について調べたいなら新宿都税事務所といった具合です。

この固定資産課税台帳、昔は所有者しか閲覧できませんでしたが、平成15年4月1日からは借りている人も閲覧できるようになりました。借りている人が閲覧する場合は、賃貸借契約書などが必要になりますので、その物件がある市区町村にお問合せ下さい。

 

 

賃貸物件について法人契約できるのか

社宅で節税する場合は、法人での賃貸借契約が必須です。役員が直接契約している場合の家賃を会社が負担するといったことダメです。
法人契約ができない物件は少なくありません。新しく物件を借りる場合は法人契約が可能な物件を探せば良いのですが、役員が現在居住している賃貸物件について、個人契約から法人契約に変更することは難しいと思ってください。変更が可能の場合でも、基本的にはイチから契約をやりなおすことになります。改めて審査がされて、敷金礼金なども新たに発生することになるかもしれません。
社宅を利用した節税を考えている場合は、自分だけでやろうとせずに、ぜひ税理士に相談してください。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧を参照ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)で節税(フリーランス・個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)による節税についてご説明します。

 

 

経営セーフティ共済の概要

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは、1年以上経営しているフリーランスや個人事業主、中小企業が加入することができる、取引先の会社が倒産したときに共済金の貸付けが受けられる共済制度です。取引先の倒産によって、連鎖倒産や経営難に陥ることを防止することを目的としています。中小企業倒産防止共済法に基づいて、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する公的な制度です。

 

 

経営セーフティ共済の貸付け額

経営セーフティ共済の貸付けの額は、積み立てておいた掛金の10倍(800万円まで積み立てられるので、最高でその10倍の8,000万円)の範囲内、かつ回収が困難な売掛債権などの額の範囲内となります。

 

 

経営セーフティ共済の貸付条件

経営セーフティ共済の貸付けの条件は、無担保、無保証人、無利子となっており、返済条件は、5年から7年の毎月均等返済です。貸付を受けることができるのは、取引先が倒産したときなので、設備投資などを理由とした貸付は受けられません(倒産が発生していなくても、解約手当金の範囲内での一時貸付金の制度はあります)。

 

 

経営セーフティ共済の貸付にともなう掛け金の一部消滅

経営セーフティ共済の貸付は無利子ですが、利息の代わりとして、積み立ててある掛け金のうち、貸付額の1/10に相当する額の掛け金の権利が消滅してしまいます。例えば、掛け金を300万円積み立てている状態で、1,000万円の貸付を受けた場合、掛け金のうち100万円(貸付額1,000万円の1/10)が利息相当として消滅、積み立ててある掛け金の残高は200万円(300万円-100万円)になります。

 

 

経営セーフティ共済の毎月の掛け金

経営セーフティ共済の毎月の掛け金は、5,000円から200,000円の間で選ぶことができ、途中で増減させることも可能です。

 

 

経営セーフティ共済の取扱い金融機関

経営セーフティ共済の取扱い金融機関ですが、ゆうちょ銀行やネット銀行など加入できない金融機関口座があります。経営セーフティ共済に加入するためには金融機関の口座が必要となるので、加入できる金融機関に口座を作る必要があります。

 

 

経営セーフティ共済の節税メリット

経営セーフティ共済は、取引先の倒産によって、自らが倒産や経営難に陥ることを防止することを第一の目的としていますが、毎月の掛け金の全額を損金にすることができるため、節税にも使えます。損金にできるということは、それだけ所得を減らせるので、その結果税金を安くすることができます。

 

 

経営セーフティ共済による節税額

掛け金の積み立て上限は800万円と決まっていますが、1年間で最大240万円まで積み立てることができます。税率が40%だとすると、96万円も税金を減らすことができるのです。

 

 

解約手当金は益金になり税金がかかる

毎月の掛け金の支払を40か月以上続けていれば、解約した時には積み立てていた掛け金の100%全額を解約手当金として受け取ることができます。しかし、この解約手当金は益金となるので税金を払わなくてはいけません。税率が40%で、240万円の解約手当金を受け取ったとしたら、96万円の税金を払わなければいけないことになります。

 

 

税金の繰り延べ

掛け金を支払った時に節税になっても、解約手当金を受け取った時に余分に税金を払うことになっては、意味がないと考える方も多いでしょう。この節税メリットは、税金を恒久的に減らすのではなく、税金の支払を今ではなく将来に繰り延べることができる点にあります。

 

 

経営セーフティ共済で節税を行う場面

今のところ経営が順調で毎年利益が出るようになってきたが、まだまだ将来は不安で業績が落ちることも大いに考えられる。金融機関や取引先との関係上、この先赤字にはしたくない。でも、目の前の利益は減らして節税したい。そんなときは、決算月に経営セーフティ共済に加入して1年分を前払いして節税する。将来赤字になりそうなときに解約して解約手当金を利益に計上して赤字を免れる。

このように、受け取った解約手当金は何に使っても問題ありません。この他にも、将来の退職金の支払や、大規模な修繕費に充てるために、経営セーフティ共済を利用して毎年の利益が大きくブレないようにしている会社さんも多いです。

 

 

生命保険による節税との違い

生命保険による節税と似ている部分がありますが、生命保険の解約返戻金の額は時系列でカーブを描いているので、解約返戻金が一番多い時期に解約しなければ損をしてしまいます。そのため解約に合わせて出口戦略も綿密に詰めなければなりません。

対して経営セーフティ共済は、40か月以上経過後ならいつ解約しても100%の解約手付金がもらえます。

解約時期に融通が効くのが生命保険と比較したメリットです。

デメリットは積み立て上限が800万円であるところです。

生命保険は設計次第で上限がありません。生命保険による節税をお考えの場合は、その前に経営セーフティ共済による節税も検討してみて下さい。

 

 

掛け金の一括払い

掛け金は将来払う分をまとめて一括で払うことができます。この場合、1か月につき掛け金の月額の1,000分の5が前納減額金として割引されます。積み立てられた掛け金には利息は付きませんが、一括で払うことによって、実質的に利息が付くことになり少しお得になります。ただし、12か月を超える分の前納は12か月として計算されます(12か月を超える前納は損金になりません)。

税金は1年分の前払いまで損金として認めてくれるので、毎月の掛け金12か月分に加えて、決算月に1年分の前納を行えば、1年間で24ヶ月分の掛け金を損金に計上することができます。

 

 

税率差を利用

フリーランス、個人事業主(累進課税)や中小企業(800万円以下か超えるか)の場合は、所得の額によって税率が変わります。そのため、税率が高い時に掛け金を払い、税率が低い時に解約手当金を受け取れば、税率の差がまるまる儲けになります。

 

 

出口戦略が重要

経営セーフティ共済を節税に利用するには、解約手当金を受け取るときにどんな費用に充当するかという出口戦略が重要になります。経営セーフティ共済による節税をお考えの方は税理士に相談してみてください。

 

 

まとめ

経営セーフティ共済の節税メリットは毎月の掛け金の全額を損金にできることです。ただし解約金手当金は利益、益金になるので税金がかかります。そのため、解約手当金をいつ受け取るかという出口戦略が重要になります。そして、生命保険による節税をお考えの場合は、その前に経営セーフティ共済による節税も検討してみて下さい。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧を参照ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

小規模企業共済で節税(フリーランス・個人事業主、法人の役員)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、小規模企業共済による節税をご紹介します。

 

 

小規模企業共済の概要

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主の方、中小企業の役員の方のみが加入することができる、国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している公的な退職金の共済制度です。個人事業を廃業したときや会社の役員を退職したときなどに、毎月掛け金として積み立てていたものを受け取ることができます。

 

 

掛け金を支払った時の節税メリット

小規模起業共済の掛け金は、毎月1,000円から7万円まで自由に設定でき、掛け金を変更して増減させることも可能です。掛け金は予定利率1.0%で運用されます。平成17年から平成24年の8年間における運用利回りの幾何平均は1.77%となっています。単純に利回りだけを見ると、他に魅力的な金融商品はたくさんあるでしょう。

しかし、小規模企業共済の最大のメリットは大きな節税効果にあります。それは、掛け金の全額を個人の所得から控除できる点です。所得から控除できるということは、それだけ所得が減ることになるため、その結果税金が安くなります。

なお、会社から掛け金を払うことはできないため、会社役員の方の場合は、契約者である自分自身の収入から掛け金を支払って、自分個人の所得から控除します。

支払い時の節税について詳しくは、「小規模企業共済等掛金控除とは?確定拠出年金と比べて」を参照ください。

 

小規模企業共済による節税額の試算

どれだけ税金(所得税+復興特別所得税+住民税)が安くなるかを試算してみました。

税額は平成25年1月1日現在の税率に基づいて、所得税には復興特別所得税を含めており、住民税均等割は4,000円として試算しています。

課税所得が200万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 2,400円 9,600円
5,000円 60,000円 11,600円 48,400円
10,000円 120,000円 20,700円 99,300円
30,000円 360,000円 56,900円 303,100円
50,000円 600,000円 93,200円 506,800円
70,000円 840,000円 129,400円 710,600円

 

課税所得が500万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 3,700円 8,300円
5,000円 60,000円 18,300円 41,700円
10,000円 120,000円 36,500円 83,500円
30,000円 360,000円 109,500円 250,500円
50,000円 600,000円 182,500円 417,500円
70,000円 840,000円 255,600円 584,400円

 

課税所得が1,000万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 5,200円 6,800円
5,000円 60,000円 26,200円 33,800円
10,000円 120,000円 52,400円 67,600円
30,000円 360,000円 157,300円 202,700円
50,000円 600,000円 262,200円 337,800円
70,000円 840,000円 367,000円 473,000円

課税所得が1,000万円の人が毎月の掛け金を7万円で年間84万円を支払った場合、節税額が36.7万円となり、掛け金の実質負担額は47.3万円になります。つまり47.3万円の掛け金で84万円を積み立てたことになるのです。掛け金拠出年度の利回りはスゴいですね。

 

 

共済金を受け取った(解約した)時の節税メリット

小規模企業共済の掛け金は積み立てられ運用されます。そして廃業した時や退職した時、事業を譲渡した時などに共済金として受け取ることができます。受け取り方法は、一括して受け取ることはもちろん、年金のように分割して受け取ったり、その2つを併用して受け取ることも選択できます。掛け金の納付期間が5年以上であれば、受け取る共済金は払い込んだ掛け金を上回ります。一括で受け取る場合は、退職所得として扱われるため、税金が優遇されます。分割で受け取る場合は、公的年金等の雑所得として扱われるため、こちらも税金が優遇されます。

節税メリットが大きいのは、退職所得として一括で共済金を受け取る場合です。

 

 

具体的な計算例で見てみましょう。

例えば、35歳から65歳まで毎月4万円の掛け金を払い込み、年利1%で運用したとすると、65歳で受け取る共済金は約1,686万円になります。

 

 

退職所得控除の金額

退職所得控除の金額は以下のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下の場合 40万円×勤続年数
20年を超える場合 800万円+(勤続年数-20年)×70万円

(30年-20年)×70万円+800万円=1,500万円

 

 

退職所得の金額

退職所得の金額は以下のように計算します。

退職所得=(退職金-退職所得控除)×1/2
(1,686万円-1,500万円)×1/2=93万円

1,686万円受け取ったのに、93万円にしか税金がかからないことになります。

このように退職所得として受け取ると、非常に大きな節税効果が得ることができるのです。

 

 

月1,000円からでもいいので加入しよう

起業したばかりで、掛け金に回せるお金なんてないよ、という方も多いと思います。その場合は、月1,000円の掛け金でスタートして、事業か軌道に乗ってきたら増額させましょう。小規模企業共済は、加入期間が長ければ長いほど、共済金を受け取るときの節税メリットが大きくなりますので。事業と同じで小さく生んで大きく育てましょう。

 

 

元がとれるのはいつから?

小規模企業共済は、掛け金を12ヶ月(1年)以上払い込んでいれば理由を問わずいつでも解約して解約手当金を受け取ることができます。ただし、掛け金の納付期間が240ヶ月(20年)未満だと、解約手当金の額が払い込んだ掛け金より少なってしまいます。共済金の場合は5年で掛け金を上回りますが、解約手当金の場合は20年以上でないと掛け金を下回ってしまうので注意してください。

 

 

まとめ

小規模企業共済は、掛け金を支払うときも、共済金を受け取るときも節税メリットがあります。フリーランス、個人事業主、会社を設立して代表になった場合などを問わず、起業したら、毎月の掛け金は最低額の1,000円でもかまわないので、とりあえず小規模企業共済に加入しましょう。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。