カテゴリー: 税金と節税

やってはいけないサラリーマンの節税-事業所得もどきの赤字と相殺

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

最近は便利な世の中になり、税理士に聞かなくても、「サラリーマン 節税」とインターネットで検索するといろいろなサイトがヒットします。王道の節税から怪しげな節税まで様々ありますが、税理士や公認会計士など税金のプロフェッショナル以外の方が、この中から正しい節税方法を見つけるのはなかなか難しいのではないでしょうか。

今回は、そんなサラリーマンの節税について、ネットではよく見かけるけど私なら絶対やらない節税、給与所得を事業所得もどきの赤字と相殺する方法について書きたいと思います。

 

給与所得と事業所得の赤字を相殺

サラリーマンが節税するには、給与所得を減らすことができればいいのです。給与所得が減れば所得税や住民税が安くなります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した所得の図1

そこで、給与所得を事業所得の赤字と相殺することで給与所得を減らして節税しよう、という方法がネットでよく見られます。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した所得の図2

給与所得と事業所得の赤字を相殺しようという考え方自体は、なんら問題ありません。この方法の一番のポイントは事業所得として認められるかどうか、これが全てです。節税目的のための経済行為を事業所得として認めてくれるほど税務署は甘くありません。

 

給与所得と雑所得の赤字は相殺できない

事業所得として認められないと雑所得になります。雑所得の赤字は給与所得と相殺できません。雑所得の赤字をいくら積み上げても、サラリーマンの節税にはなりません。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した所得の図3

 

サラリーマンの節税の間違った情報

ネットでは、サラリーマンの節税として、趣味や副業を事業所得にして、その赤字を給与所得と相殺することで節税する方法が散見されます。私的な支出も事業のための経費ということにして事業の赤字を積み上げようということが提唱されている場合すらあります。

趣味や副業でも、営利目的があり継続性があれば事業所得として認められる、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出すれば事業所得として認めてもらえるといった記載もよく見受けられます。しかし、そんなことをしても事業所得になるとは限らないので注意してください。

 

雑所得ではなく事業所得として認められるためには

雑所得ではなく事業所得として認められるために考慮される基準を例示します。

  • その取引の目的
  • その取引が本人の計算と危険によって独立に運営されているか
  • その取引に営利性と有償性があるか
  • その取引に反復性と継続性があるか
  • その取引を行うにあたっての精神的、肉体的疲労の程度
  • その取引を行うための人的、物的設備
  • 本人の職業や職歴、社会的地位、生活状況
  • その取引を行うことで将来的に継続安定して収益を得ることができる可能性があるか

これらの基準を総合的に勘案し、社会一般の常識と照らしあわせて、事業所得と認められるか、雑所得になるのかが検討されるのです。赤字の有無で決まるわけではありません。

会社勤めという本業があるサラリーマンにとって、事業所得を認めてもらうのは難しいと言えます。

 

この方法が成功しているサラリーマンは?

この方法が成功しているサラリーマンは、単純に今まで税務調査が入っていないからだけです。

昔は税務署も見逃してくれていたのかもしれませんが、今は違います。この方法が世間に広まったことにより、税務署も目を光らせています。この方法によって節税(脱税)した額が少額なサラリーマンであっても、きっちり税務調査が入っています。

税務調査が入ったら今まで節税(脱税)で稼いだ額なんて全て吹っ飛んでしまいますよ。

 

おわりに

インターネット上にある節税についての情報は取捨選択が難しいです。ネットの情報だけを鵜呑みにするのではなく、困ったときは税理士に相談してくださいね。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

売上の計上基準を節税に使っていいのか

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、売上計上基準節税の関係について解説したいと思います。

 

売上計上のタイミングと節税

売上はどのタイミングで計上するのが良いのでしょうか。

節税の点から見ると売上は遅いタイミングで計上したほうが、税金の支払いを先に延ばすことができるので、メリットがあるとも言えます。資金繰りの基本は、支払いはなるべく遅く、入金はなるべく早くです。しかし、税法上は入金したときまで売上の計上を先延ばしすることは原則として認められません。

入金したときではなく、モノ、サービスを引き渡したときに売上を計上することになります。

 

売上の計上基準

税法上で認められている売上の計上基準はいくつかあるので、そのうち一般的なものを紹介します。

出荷基準

  • 商品などを出荷日に売上を計上する方法です。取引先から注文があって、商品を倉庫や工場から出したとき、商品をトラックに積み込んだときなどを出荷日として売上計上します。

検収基準

  • 商品などを受け取った取引先が、検収(数や品質などが注文通りかチェックすること)した日に売上計上する方法です。

使用収益基準

  • 商品などを受け取った取引先において、その受け取った商品の使用が可能となった日に売上計上する方法です。

出荷基準よりは、検収基準、使用収益基準の方が売上計上のタイミングが遅くなるので節税になるといえます。

 

売上計上基準はむやみに変更できません

利益が少ないときは出荷基準だけど、利益が多いときは検収基準にして売上を来年に繰り延べよう、といったように売上計上基準はむやみに変更できません。簡単に変更できると脱税に利用されてしまいます。

いったん売上計上基準を決めてしまったら、理由がないと変更できないことに注意してください。

 

売上計上基準の選び方

節税になるからといって、売上の計上を遅くした方がよいのでしょうか。今年の売上を減らせても、その減らした分の売上は来年の売上として計上されます。

売上計上基準の選び方で、一番重要なのは節税ではなく事業の実態に合致しているかどうかです。不特定多数に販売される商品なら出荷基準、特注品の販売などなら検収基準が合っているでしょう。不動産の販売なら使用収益基準になります。

事業の実態から乖離した売上計上基準は、財務数値を歪めてしまいます。その結果、事業計画の策定や意思決定において支障が生じる恐れがあります。

 

おわりに

単純に節税になるからといって、売上の計上基準の変更を促すのではなく、ビジネスに合った適切な売上計上基準を示して顧客の事業の発展に貢献できるのが良い税理士だと思います。

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

消耗品を買って節税-消耗品費

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

「利益がたくさん出ているから節税したいな。でも決算日まであと一週間、時間がないけどどうしよう。そうだ、消耗品をたくさん買って消耗品費として経費にしてしまおう。」
このように考えるフリーランス・個人事業主、会社の社長さんはけっこういらっしゃいます。でも、消耗品費として経費にするには注意しなければいけないポイントがいくつかあります。

今回は、そんな決算近くで消耗品をたくさん買っても、消耗品費として経費にして節税する方法について解説したいと思います。

 

消耗品費

消耗品費とは、1年内に使ってしまう、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品などの消耗品の購入費用のことをいいます。具体的には、文房具や日用雑貨などの購入費用が該当します。会社によっては、事務用消耗品費や雑費などと使い分けている場合もありますが、あまり細かく分類する必要はないと思います。

 

消耗品はいつ経費になるのか

原則として、消耗品は買ったときではなく使ったときに消耗品費として経費にすることができます。そのため、節税のために決算間際になって消耗品をたくさん買い込んでも、決算日までに使わなければ経費にできません。未使用分は経費ではなく貯蔵品として資産計上します。

 

消耗品を買ったときに経費にするには

消耗品を買ったときではなく使ったときに経費にしていては、事務手続きがとても面倒になります。例えば、決算になって、ボールペン1本まで使ったもの使ってないものに分けて、使ったものだけ経費にしていては、手間と時間がかかってしょうがありません。

そこで、税法では下記の条件を満たした場合は、消耗品を買った時点で経費にすることを認めています。

  • 毎年同じくらいの数量を買っている
  • 買った消耗品については毎年経常的に使っている
  • 毎年継続して消耗品を買ったときに経費として経理処理している

 

税務調査

税務調査においては、資産として計上しなければならないものが消耗品費にまぎれていないかチェックされます。消耗品費の金額が相対的に大きくなっている場合などは、その理由をしっかり説明できるように準備しておく必要があります。

 

おわりに

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

広告宣伝費で節税-でも交際費にならないように注意

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、広告宣伝費節税する方法について解説したいと思います。

 

広告宣伝費

広告宣伝費とは、会社の紹介、商品や製品、サービスの売り込み、求人広告などを目的として、不特定多数の相手を対象に行われる広告宣伝活動のための支払いのことをいいます。

具体的には下記のようなものがあります。

  • 新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどで広告宣伝する費用
  • ポスター、チラシ、ダイレクトメールにかかる作成や印刷、発送などの費用
  • 会社案内、パンフレット、カタログにかかる作成や印刷、発送などの費用
  • 求人広告費用
  • ホームページ作成費用
  • リスティング広告やバナー広告などのネット広告費用
  • 社名入りのカレンダー、手帳、ボールペンなどの作成費用

 

広告宣伝費で節税

広告宣伝費は、他の費用と同様にフリーランス・個人事業主の必要経費、株式会社などの損金になります。他の費用に比べて、支払いの時期や金額をこちらの都合で調整しやすいため、決算近くの節税策として利用することができます。今年は利益が出過ぎちゃったから節税したいな、という場合に検討してみてください。

広告宣伝というものは効果が分かりづらいものがあります。利益がたくさん出た年に、節税を兼ねて色々な広告宣伝の方法を試してみるのも良いですね。

なお、広告宣伝費のなかには、固定資産(金額が大きい、使用期間が1年以上)、繰延資産(特約店などに広告宣伝用の看板や棚、車などを贈与)、前払費用(1年以上前払い)、貯蔵品(モノが手もとに残っている)といった資産に計上しなければならないものがあります。この場合は支払ったときに全額経費にできないので注意してください。広告宣伝費で多額の支出を考えている場合は税理士に相談することをオススメします。

 

交際費とみなされる広告宣伝費に注意

税法における交際費とは得意先や仕入先などの取引先やその他事業に関係のある会社や個人に対して行う接待、供応、慰安、贈答などの行為のための支出のことを言います。

広告宣伝費のつもりで支出した経費が、税務調査において広告宣伝費とは認められず交際費に該当すると言われてしまったら、追加で税金を払うハメになるかもしれません。

このため税法のルールを理解して、広告宣伝費と交際費をしっかりと区別する必要があります。税法のルールの大まかなポイントは、不特定多数の相手に対する支払いは広告宣伝費、特定の相手に対する支払いは交際費になるということです。不特定多数の相手というのは、基本的には一般消費者をイメージすればよいと思います。

 

下記のような不特定多数の相手に対する宣伝のための支払いについては交際費ではなく広告宣伝費になります。

  • 一般消費者に対して、抽選で金品を交付したり旅行や観劇などに招待するための費用
  • 商品を買った一般消費者に対しプレゼントや景品を交付するための費用
  • 工場見学者などに製品の試飲、試食をさせるための費用
  • 得意先などの取引先に対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
  • 一般消費者に対して製品や商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼を交付するための費用

 

下記のような場合は、一般消費者に当たらないので、広告宣伝費ではなく交際費になるので注意してください。

  • 医薬品メーカーや販売業者が、医師や病院を対象とする場合
  • 化粧品メーカーや販売業者が、美容業者や理容業者を対象とする場合
  • 建築材料の製造業者や販売業者が、大工や左官など建築業者を対象とする場合
  • 機械工具の製造業者や販売業者が、鉄工業者を対象とする場合

 

おわりに

税理士業界は、昔は広告宣伝活動が規制されていましたが、今では原則として自由に広告できるようになりました。ネット上においても、格安料金をかかげている税理士さんなどを中心に広告宣伝活動が激化しています。
目の前の仕事をしっかりとやっていけば、自然とお客様は増えていくので、広告や宣伝なんて不要、という考えでは厳しいのかもしれませんね。

広告宣伝費については、「交際費と広告宣伝費の違い」も参照ください。

 

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

出張手当で節税になるけど・・・

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

お客様や営業先が全国にあるような場合や、サービスの供給者が限られているような場合は、出張の機会も多くなることでしょう。
今回は、そんな出張の際に出張手当や出張日当を支給することで節税する方法について解説したいと思います。

 

出張手当や出張日当

社長などの会社役員や従業員が出張した際には、交通費や宿泊費とは別に出張手当や出張日当を支給することができます。この出張手当や出張日当と言われるものは、出張という通常の業務とは異なる業務を行うこと、拘束時間が長くなることによる肉体的・精神的な疲労に対する慰労や、出張しなければ発生しないような外食費など諸経費の補てん的な性格をもっています。

 

払う側の会社だけでなく、もらう側の役員や従業員も節税になる

旅費規程や出張規程といったものに基いて支払われた出張手当や出張日当は、払う側の会社だけでなく、もらう側の役員や従業員も節税になります。

 

出張手当を払う側である会社の節税

出張をした人に出張手当を支払うと、出張手当の全額が経費(損金)になるので法人税の節税になります。また、出張手当は消費税における課税仕入に当たるので、納める消費税が少なくなるため、消費税の節税にもなります。

 

出張手当をもらう側である役員や従業員の節税

役員や従業員が会社から給料をもらうと、その収入については所得税や住民税がかかります。

しかし、役員や従業員が会社から出張手当をもらっても、その収入については所得税や住民税がかかりません。出張手当は税金がかからない収入であるため、出張手当をもらう側である役員や従業員にとっても節税になるのです。

 

節税の効果が高くなる場合

出張が多い役員や従業員に対して、出張の度に出張手当は支払っていなかったけど、業務手当などの形で毎月の給料に定額を上乗せして支給していた場合は、出張手当に切り替えることで大きく節税できることになります。業務手当として給料に上乗せしていた額と出張手当と支払う額が同じであったとしても、もらう側は、所得税や住民税を節税できますし、社会保険料の自己負担分も減ります。支払う側は、消費税が節税できますし、社会保険料の会社負担分も減ります。

 

出張手当の問題点

出張手当には問題点があります。社長が節税したいため、出張手当が欲しいためなど理由で、ムダな出張が増えてしまう可能性があることです。出張が増えて節税になっても、ムダな経費が増えてキャッシュ・フローが悪化してしまっては意味がありません。

オーナー社長が出張手当をもらう分には、お金が会社からオーナー社長に移るだけなのであまり問題にはなりませんが、従業員への出張手当はキャッシュアウト、会社から出て行くお金であることを忘れないで下さい。

従業員が少なく、出張のほとんどはオーナー社長がしている場合は、出張手当による節税は効果的ですが、従業員が増えてきて、従業員の出張が多くなってきたら、出張手当を廃止するなど旅費規程、出張規程を見直した方がいいかもしれません。

 

出張手当で節税するためには

出張手当で節税するためには、すなわち税務調査において税務署に認めてもらうためには、旅費規程や出張規程などを整備して、その支給の根拠を定めておかないといけません。好き勝手に出張手当を支払っても税務署は経費(損金)として認めてくれないのです。

そして、出張手当の金額については、役職や給料などいろんな事項を勘案して定めなければいけません。一概にいくらまでならOKとは言えないのですが、一般的に社長なら1日1万円、平社員なら1日3,000円くらいなら税務署になにか言われることはないと思います。

出張手当や出張日当は税務調査において目をつけられるポイントでもありますので、出張手当の支給額、旅費規程や出張規程の作成については、税理士とよく相談して決めると良いですよ。

 

出張手当に対する税理士のスタンス

出張で節税する方法について書いてきました。出張で節税する方法を提案する税理士さんは多いと思います。でも、私はもう一歩踏み込んで、お客様と一緒になって、出張そのものを減らす方法を考えていきたいと思っています。

出張はコストがかかります。交通費や宿泊費、日当だけではありません。最大のコストは人件費、時間です。お客様の手もとにキャッシュを多く残せるようにアドバイスできる税理士が良い税理士です。節税はその手段の一つに過ぎません。出張で節税するよりも、出張そのものを減らした方が、より効果的に多くの現金が手もとに残るようになりますよ。

 

おわりに

私のお客様は港区、渋谷区、新宿区など東京23区が多いので、最近は出張の機会はめっきり減ってしまいましが、監査法人やファイナンシャルアドバイザリー会社で働いていた時代は、出張で全国いろいろなところに行きました。年の半分を出張していたこともあります。出張では仕事の内容がハードな案件が多くて大変でしたが、普段訪れない土地に行けるのはワクワクしましたし、その土地の名物も食べられるので、私はけっこう出張が好きでしたね。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。