カテゴリー: 従業員給与

会社設立後の個人事業主当時からの従業員への退職金 | 従業員給与 | 法人と個人

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として、港区や渋谷区、新宿区といった東京23区のベンチャー企業や若い会社などの法人、個人事業主・フリーランスなどの個人のお客様を支援してきた経験から、税金や節税について解説します。

今回は、個人事業主から法人成りして会社を設立した後に、個人事業主の時からの従業員に対して退職金を支払った場合の取り扱いについて説明したいと思います。

 

 

従業員への退職金

フリーランス・個人事業主の方が、従業員に退職金を支払った場合、その退職金は事業の必要経費 ( 所得税を計算するうえで費用として認められるもの ) になります。ただし、白色申告者の事業専従者や青色事業専従者への退職金は必要経費になりません。

株式会社など法人の方が、従業員に退職金を支払った場合、その退職金は会社の損金 ( 法人税を計算するうえで費用として認められるもの ) になります。

 

 

会社設立後の個人事業主当時からの従業員への退職金

フリーランス・個人事業主として事業をスタートして、事業規模が大きくなってきたので法人成りして株式会社になりました。その後、個人事業当時から在籍していた従業員が退職することになり、その従業員に退職金を支払うことになりました。この退職金を計算する際に使用する勤務期間は、個人事業時の勤務期間と株式会社になった後の勤務期間の合計になっています。

 

この退職金は、全額を会社の損金にしてもいいのでしょうか?

 

原則として、この退職金の全額を会社の損金にすることはできません。会社の損金にすることができるのは、会社になった後の勤務期間の分のみになります。

個人事業時の勤務期間の分の退職金は、会社の損金ではなく、個人事業の最終年度の必要経費になります。個人事業の最終年度の必要経費が増えることになるので、その分所得が減って税金も減ることになります。よって、個人事業の最終年度の所得税について更生の請求を行って、税金を還付してもらいます。

 

ただし、個人事業時に白色申告者の事業専従者や青色事業専従者だった人への退職金については、上記のとおり個人事業時の勤務期間の分は必要経費になりません。なお、会社になった後の勤務期間の分は会社の損金になります。

 

 

会社設立してから相当の期間が過ぎた場合

個人事業の時からの従業員への退職金は、原則として個人事業の時の勤務期間分は個人事業の必要経費に、会社設立後の勤務期間分は会社の損金になります。

しかし、その退職が会社設立後相当の期間が経過した後である場合は、その退職金の全額が会社の損金にすることができます。個人事業主の分、会社の分に分ける必要はありません。

この場合、相当の期間というものが法律や通達などに書かれていないため、具体的にはどのくらいの期間なのかが問題になります。個人事業の時の勤務期間にもよりますが、会社を設立して5年程度経過している場合は、相当の期間になるといわれています。

会社を設立してから相当の期間が過ぎた場合であっても、個人事業時に白色申告者の事業専従者や青色事業専従者だった人への退職金のうち、個人事業時の勤務期間の分は会社の損金にすることができないので注意してください。

繰り返しで恐縮ですが、個人事業時に白色申告者の事業専従者や青色事業専従者だった人について、個人事業の時の勤務期間の分の退職金は、個人事業の必要経費にも、会社の損金にもならないと覚えておいてください。

 

 

個人事業主が法人成りの新規設立会社に支払う退職金相当額

個人事業主が退職金規程などを整備して退職金の計算が適正に行われている場合、個人事業主が法人成りの新規設立会社に支払う退職金相当額 ( 個人事業から新規設立会社に引き継ぐ従業員にかかるもの ) は、個人事業の必要経費にすることができます。

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で、法人の設立をお考えの方や会社設立して日が浅い方がいらしたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、あなたの会社の持続的な成長のお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
税金や節税、起業などについて、皆様のお役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしかったら情報の一覧もご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。