カテゴリー: ファイナンス

スワップ取引とは | デリバティブの基礎-3

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるスワップ取引について説明したいと思います。

 

 

デリバティブとは

デリバティブとは、株式や債券、金利、為替、コモディティ(穀物や金属、非鉄金属といった商品)などから”派生”した取引のことで、日本語では金融派生商品ともいわれます。デリバティブを一言で言うと、将来に行う取引を現時点で予約する取引です。

デリバティブの概要については下記ページを参照ください。
デリバティブとは | デリバティブの基礎-1

このデリバティブの代表的な取引として、今回ご説明するスワップ取引があります。

 

 

スワップ取引とは

英単語のスワップ(swap)には、交換するという意味があります。

デリバティブのスワップ取引とは、将来発生するお金の流れ(キャッシュフロー)を交換する取引のことをいいます。スワップ取引で交換するキャッシュフローは金利です。スワップ取引は、通常1回こっきりの交換だけでは終わらず、長い期間にわたって何回も交換が行われます。

スワップ取引には金利スワップと通貨スワップがあります。

 

 

金利スワップとは

金利スワップとは、同じ種類の通貨で、異なる種類の金利を交換する取引です。交換するのは金利だけで、金利を計算する元になる元本の交換は行いません。元本の交換は行いませんが、金利を計算するうえでの名目上の元本として想定元本を決めておきます。

例えば、日本円の変動金利と日本円の固定金利を交換する場合が該当します。

 

 

通貨スワップとは

通貨スワップとは、異なる種類の通貨で、金利を交換する取引です。交換するのは金利だけでなく、金利を計算する元になる元本の交換も行います。

例えば、日本円の変動金利と米ドルの固定金利を交換する場合が該当します。この場合は、金利だけでなく、元本である日本円と米ドルの交換も行います。

なお、異なる種類の通過で金利を交換する取引のうち、金利の交換だけを行って元本の交換をしない取引をクーポンスワップといいます。

 

 

スワップ取引の目的

スワップ取引を行う目的は、金利が変動するリスクを管理することにあります。

借り入れや債券発行などの資金調達を行うときには金利が発生します。この金利というものは、上がったり下がったり変動するというリスクがあります。

金利には大きく分けて変動金利と固定金利があります。それぞれの金利変動リスクを考えてみましょう。

 

変動金利の場合の金利変動リスク

変動金利は、借入期間中の市場の金利動向などによって定期的に金利が変動します。そのため、現時点においては将来どれくらいの金利を支払うことになるかが分かりません。

変動金利でお金を借りた場合の金利変動リスク(ややこしい表現ですみません)は、将来金利が上がってしまうと、それだけ支払う金利が多くなってしまうことにあります。

 

固定金利の場合の金利変動リスク

固定金利は、借入期間の始まりから終わりまで金利が固定されており変動しません。そのため、市場金利が上がっても下がっても、将来支払うことになる金利は一定になります。

固定金利でお金を借りた場合の金利変動リスクは、市場金利が下がっても、当初の契約どおりに高い金利を払い続けなければならないことにあります。

 

金利変動リスクの管理

金利変動リスクを管理するために

将来の市場金利が上がると予想する場合は、変動金利による借り入れから発生する金利と固定金利を交換したいと考えます。

逆に、将来の市場金利が下がると予想する場合は、固定金利による借り入れから発生する金利と変動金利を交換したいと考えます。

こんな時にスワップ取引が役に立つのです。

 

 

金利スワップの例

金利スワップの例として、住宅ローンの金利スワップを紹介します。

Aさんは甲銀行から変動金利で住宅ローンを借りています。
当初は当分の間低金利が続くだろうと思って変動金利で住宅ローンを組みましたが、最近になって近いうちに金利は上がってしまうのではないかと思うようになりました。
そこでAさんは乙銀行に相談したところ、金利スワップの提案を受けました。

金利スワップの内容はこうです。

  • 下記の取引を住宅ローンの返済が終わるまで行う
  • 想定元本は住宅ローン残高とする
  • Aさんは乙銀行に固定金利を支払う
  • 乙銀行はAさんに変動金利を支払う
  • AさんはZ銀行から受け取った変動金利をそのまま甲銀行に支払う

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した金利スワップの図

 

この金利スワップを実行すれば、Aさんの住宅ローンは実質的に変動金利から固定金利に変わることになります。交換するのは金利だけです。住宅ローン自体の借り換えを行うものではありません。

なお、この金利スワップによってAさんが得をするか損をするかは住宅ローンを返済し終わった後でないと分かりません。

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

先物取引とは | デリバティブの基礎-2

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつである先物取引について説明したいと思います。

 

 

デリバティブとは

デリバティブとは、株式や債券、金利、為替、コモディティ(穀物や金属、非鉄金属といった商品)などから”派生”した取引のことで、日本語では金融派生商品ともいわれます。デリバティブを一言で言うと、将来に行う取引を現時点で予約する取引です。

デリバティブの概要については下記ページを参照ください。
デリバティブとは | デリバティブの基礎-1

このデリバティブの代表的な取引として、今回ご説明する先物取引があります。

 

 

先物取引とは

先物取引とは、
将来の定められた日に
定められた商品について
定められた数量を
定められた価格で
売買することを現時点で約束する取引をいいます。

現時点において、将来売買する際の価格や数量などを約束だけして、将来の期日になった時点で、その時の価格がいくらになっていようと、はじめに約束した価格で売買を行うことになります。

 

 

先物取引の例

定義だけではわかりづらいので先物取引の例を紹介します。

 

車が趣味の甲さんは毎月たくさんのガソリン代を払っています。
今のガソリン価格は1リットルあたり150円だけど、ガソリン価格は最近値上がり傾向だし将来もっと値上がりするのだろうなあと頭を悩ませています。

甲さんの友達で同じく車が趣味の乙さんも、ガソリンの価格変動は悩みの種になっています。ガソリン価格は最近まで値上がりが続いていたけど、そろそろ値下がりする時期だろうと感じています。

 

甲さんは、ガソリン価格は将来値上がりすると考えています。
乙さんは、ガソリン価格は将来値下がりすると考えています。
そんな甲さんと乙さんで、次のように将来のガソリンの売買を現時点で約束することにしました。

 

「半年後、乙さんから甲さんにガソリン100リットルを1リットルあたり150円で売る。」

 

ガソリン価格が上がった場合

半年後のガソリン価格は上がって1リットルあたり200円になりました。

  • 甲さんは、1リットルあたり200円のガソリンを150円で100リットル購入することができました。(200円-150円)×100リットル=5,000円、5,000円の儲けになります。
  • 乙さんは、1リットルあたり200円のガソリンを100リットル仕入れて1リットルあたり150円で売らなければなりません。(150円-200円)×100リットル=▲5,000円、5,000円の損失になります。

 

ガソリン価格が下がった場合

半年後のガソリン価格は下がって1リットルあたり100円になりました。

  • 甲さんは、1リットルあたり100円のガソリンを150円で100リットル購入しなければなりません。(100円-150円)×100リットル=▲5,000円、5,000円の損失になります。
  • 乙さんは、1リットルあたり100円のガソリンを100リットル仕入れて1リットルあたり150円で売ることができました。(150円-100円)×100リットル=5,000円、5,000円の儲けになります。

 

将来のガソリン価格がどうなるかなんて誰にも分かりません。損をするかもしれないのにこんな将来の約束をしても意味が無いと思われる方もいると思います。

しかし、将来のガソリン価格を今の時点で固定できることに大きな意味があります。甲さんも乙さんも、半年後のガソリン価格は1リットルあたり150円ということで、前もって色々と準備ができます。このように先物取引には価格が上がるか下がるか分からないという不確実な状態を回避することができるのです。

 

 

先物取引のメリットはリスクヘッジ

上記の例のとおり先物取引には、将来行う売買の価格を現時点で決めることができるので、価価格が変動するリスクを事前に回避することができるというメリットがあります。

先物取引で価格変動のリスクを回避する方法には、買いヘッジと売りヘッジがあります。

 

買いヘッジ

将来価格が上がると予想しているものについて、値上がりする前の価格で将来買うという約束を現時点ですることを買いヘッジといいます。買いヘッジによって将来値上がりすることによる損失を防ぐことができます。

 

売りヘッジ

将来価格が下がると予想しているものについて、値下がりする前の価格で将来売るという約束を現時点ですることを売りヘッジといいます。売りヘッジによって将来値下がりすることによる損失を防ぐことができます。

 

 

先物取引の特徴

一般的にモノの売買をするときには、売買する時にモノとお金を交換して決済しますね。

一方、先物取引は、将来の約束した日に、あらかじめ決めた価格でモノの売買をすることを、現時点で約束する取引です。
そして、一般的なモノの売買のように商品の受け渡しは必ずしも行われるわけではありません。転売や買い戻しなど、約束の日において売買の差額だけを精算することができるという特徴があります。
上記の例では実際にガソリンというモノとお金を交換していますが、儲けと損失にあたる売買差額だけをお金でやりとりすることもできるのです。

 

 

おわりに

先物取引と聞くと、株式投資などと比べて何となくギャンブルっぽく思われるかもしれません。実際、先物業者の指図のままに取引を行い先物相場でスッカラカンになってしまったという話は昔からキリがありません。たしかに先物取引には投資ではなく投機という側面もあるかもしれません。しかし、他のデリバティブ取引と同様に使い方を間違えなければ、将来の価格変動を回避するリスクヘッジにも用いることができる利点もあるのです。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

デリバティブとは | デリバティブの基礎-1

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

お金に余裕が出てくると、銀行や証券会社などの金融機関を始めとしていろんなところから儲け話が舞い込んできます。私の顧問先のお客様のところにも様々な投資話が持ち込まれていますが、顧問先支援の一環として、それらの内容についてわかりやすく説明するといったこともやっています。

今回は、金融商品のなかでも特に分かりにくいデリバティブについて、その概要を説明したいと思います。

 

 

デリバティブとは

デリバティブという言葉を聞いたことがある方はいても、その中身について知っている方は少ないかもしれません。

デリバティブ(derivatives)は、日本語では金融派生商品といいます。
英単語のderivativeには、派生物という意味があります。

デリバティブとは、株式や債券、金利、為替、コモディティ(穀物や金属、非鉄金属といった商品)などから”派生”した取引のことをいいます。
なお、株式や債券、金利、為替、コモディティなどデリバティブの元になるモノのことを原資産といいます。

デリバティブとは、一言で言うと将来に行う取引を現時点で予約する取引です。

 

 

デリバティブの例

デリバティブを簡単な例で説明します。

太郎さんと花子さんは次のような約束をしました。
現在のA株式の株価は1万円です。なお、太郎さんも花子さんも現時点ではA株式を持っていません。

  • 太郎さんは花子さんに半年後にA株式を1万円で売る約束をしました(太郎さん目線)。
  • 花子さんは太郎さんから半年後にA株式を1万円で買う約束をしました(花子さん目線)。

 

半年後のA株式の株価が1万5千円になった場合

  • 太郎さんは株式市場でA株式を1万5千円で購入して花子さんに1万円で売ります。太郎さんは5千円の損になります。
  • 花子さんは太郎さんからA株式を1万円で購入して株式市場に1万5千円で売ります。花子さんは5千円の得になります。

 

半年後のA株式の株価が5千円になった場合

  • 太郎さんは株式市場でA株式を5千円で購入して花子さんに1万円で売ります。太郎さんは5千円の得になります。
  • 花子さんは太郎さんからA株式を1万円で購入して株式市場に1万5千円で売ります。花子さんは5千円の得になります。

 

デリバティブでは、実際にA株式の売買をするのではなく、A株式の株価の現在と半年後の差額のやりとりだけすることになります。よって上記の太郎さんと花子さんの約束は、デリバティブでは下記のような約束になります。

  • 半年後のA株式が1万円より高くなったら、太郎さんから花子さんに、半年後のA株式の株価と現在のA株式の株価1万円の差額を支払う。
  • 半年後のA株式が1万円より安くなったら、花子さんから太郎さんに、現在のA株式の株価1万円と半年後のA株式の株価の差額を支払う。

 

このようにデリバティブには次のような特徴があります。

  • 現物の取引ではなく差額だけによる取引を行う
  • 買う約束だけでなく売る約束もできる

 

デリバティブの種類

デリバティブの代表的な取引としては、先物取引、スワップ取引、オプション取引があります。また、これらの取引を組み合わせたものなどデリバティブには様々な種類があります。

 

先物取引

先物取引とは、将来の定められた日に、定められた商品について、定められた数量を、定められた価格で売買することを約束する取引をいいます。

 

スワップ取引

スワップ取引とは、定められた条件で、キャッシュフローを交換する取引をいいます。
交換するキャッシュフローには金利(変動金利と固定金利など)や通貨(円とドルなど)があります。

 

オプション取引

オプション取引とは、定められた日や定められた期間に、定められた商品について、定められた価格やレートで取引する権利を売買する取引をいいます。権利を売買することに特徴があります。

 

 

デリバティブの利用目的

デリバティブの利用目的にはリスクヘッジ、アービトラージ、スペキュレーションなどがあります。

 

リスクヘッジ

リスクとは不確実性のことをいいます。
リスクヘッジ(risk hedge)とは、将来の不確実性を減らしたり回避することをいいます。

 

アービトラージ

アービトラージ(arbitrage)とは、価格の差を利用して利ざやを稼ぐことをいいます。裁定取引ともいいます。

 

スペキュレーション

スペキュレーション(speculation)とは、相場変動のリスクを負って利益獲得を目指すことをいいます。投機取引ともいいます。

 

 

おわりに

デリバティブ自体が悪なのではありません。むしろ正しく使えば有用なものです。ただし、金融機関が販売するデリバティブが組み込まれた金融商品を理解せずして購入することは控えてください。デリバティブによって一流と言われる企業や大学、地方自治体などが多額の損を被っている現状があります。

持ち込まれる儲け話にうまい話なんてありません。うまい話は自分で見つけるか、自分で編み出してくださいね。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

ビジネスも人生もサンクコスト(埋没費用)に振り回されないように

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、経営に役立つコーポレートファイナンスについて解説します。

今回は、ビジネスだけでなく人生においても役に立つサンクコスト(埋没費用)という考え方について説明したいと思います。

 

 

サンクコスト(埋没費用)とは

サンクコスト(sunk cost 埋没費用)とは、すでに消費してしまってもう戻ってこない費用のことをいいます。ここでいう費用とはお金だけでなく、時間や労力なども当てはまります。

意思決定(目的を達成するために案を選ぶこと)するときには、このサンクコスト(sunk cost 埋没費用)は無視します。サンクコスト(埋没費用)に振り回されないようにしてください。

ビジネスにおける投資の意思決定については下記ページも参照ください。
会社が投資をする理由は企業価値を高めるため

文章だけで理解することは難しいと思いますので、下記の具体例をご覧ください。

 

 

サンクコスト(埋没費用)の例

サンクコスト(埋没費用)の例としてこんなものがあります。

◯◯ダムの総工事費は3,000億円かかります。すでに2,500億円の工事費がかかっていますが、諸事情で◯◯ダムの工事はストップしています。完成するまで工事を行うのか、工事を中止するのかを現在議論しているところです。

 

皆さんは

  • 完成するまで工事を行うべきだと考えますか?
  • それとも工事は中止したほうがいいと考えますか?

 

もう少し具体的に、この◯◯ダムを完成させることによるメリット(経済効果)がどのくらいあれば、完成するまで工事を続けますか?

  1. 3,000億円
  2. 2,500億円
  3. 500億円

 

正解は3の500億円です。

この場合、すでに支払った2,500億円の工事費はサンクコスト(埋没費用)になります。サンクコスト(埋没費用)である2,500億円の既工事費は、◯◯ダムが完成しても、工事を中止しても戻ってくることはありません。

意思決定するときには、このサンクコスト(埋没費用)は無視して、将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけを考えます。

よって、サンクコスト(埋没費用)である2,500億円の既工事費は無視して、◯◯ダム完成までにかかる残りの工事費500億円と、◯◯ダム完成によるメリット(経済効果)を比べて工事を続けるかどうかを決定するのが正しい意思決定になります。

 

そのため、例えば◯◯ダム完成によるメリット(経済効果)が400億円だとしたら、工事は中止することになります。今まで2,500億円もかけて、あと500億円で完成するのにもったいないと思われるかもしれませんが、既に支払った2,500億円の工事費はどうやっても戻ってきません。サンクコスト(埋没費用)は無視して、あくまで将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけで判断します。

 

ちなみに、◯◯ダムの総工事費3,000億円に対して、メリット(経済効果)が500億円では少なすぎると思いませんか?

それはごもっともな意見です。もともと総工事費3,000億円に対して、メリット(経済効果)が500億円しか見込めないのであれば、最初から◯◯ダムの建設なんてするべきではなかったのです。

しかし、今回のケースのように、途中まで支出してある状態において意思決定する場合は、過去の支出したものでもう戻ってこないサンクコスト(埋没費用)は無視して考えるのです。

 

 

もったいないおばけは出ません

何度も同じことを繰り返してしつこいですが、サンクコスト(埋没費用)は無視して、あくまで将来のメリット(経済効果)とデメリット(追加費用)だけを比較して意思決定を行ってくださいね。サンクコスト(埋没費用)を無視してももったいないおばけは出ませんので。

サンクコスト(埋没費用)はもったいないおばけではない

 

 

色々なサンクコスト(埋没費用)

サンクコスト(埋没費用)の色々な例を紹介します。

 

資格試験勉強

資格試験勉強のためにお金、時間、労力のほとんどを使ってきたが残念なことに今年も不合格になってしまった。今さら止めることができないので、来年に向けてガンバるぞ。

→ 今までのお金、時間、労力はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。来年以降の合格後のメリット(経済効果および合格する確率)とデメリット(追加費用および不合格になる確率)を比較して資格試験勉強を続けるか断念するか決めます。

 

なくしてしまったライブチケット

楽しみにしていたアーティストのライブチケット(1万円)をなくしてしまった。もう一度チケットを買い直すか、ライブに行くのを諦めるか、どうすればいいのだろう・・・

→ なくしてしまったライブチケット(1万円)はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。ライブが1万円以上の価値があると考えるならチケットを買い直します。2万円(なくした1万円+買い直し1万円)では判断しません。

 

 

ホストへの貢物

ホストの源氏クンに振り向いてもらえるように、今までたくさん貢いできたしボトルも何本も入れてきた。いつになったら私と付き合ってくれるのかな。

→ 源氏クンに今まで貢いだ分はサンクコスト(埋没費用)なので無視して下さい。これからの可能性だけを考えて貢ぐことを続けるか考えることになります。

 

 

ギャンブルへの投資額

今日は◯◯万円も使っているのだからもう後には引き返せない。次こそ当ててやる。

→ 今までギャンブルに投資した金はサンクコスト(埋没費用)なので無視してください。なお、一般的にギャンブルは胴元がいるかぎり、将来のメリット(払戻金)はデメリット(掛金)を必ず下回ります(長期的には必ず損をします)。

 

いくつかサンクコスト(埋没費用)をご紹介しました。分かってはいてもなかなか割り切って考えられないですよね。

 

 

おわりに

自分自身もそうですが、「サンクコスト(埋没費用)は無視する」ということについて、頭では理解できても心で納得するのは難しいです。とは言っても頭だけでも理解することは、きっと役に立つと思います。ビジネスや人生において何かの判断に迫られたときは、ぜひこのサンクコスト(埋没費用)という概念を思い出してみてください。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、事業の持続可能な成長をご支援します。

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

黒字倒産とは?利益あるけどキャッシュがない

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として、港区や渋谷区、新宿区といった東京23区において、起業やベンチャー企業の支援してきた経験から、会社を発展させるための心強い武器になるファイナンスについて解説します。

今回は、黒字倒産について説明したいと思います。

 

 

黒字倒産とは

黒字倒産とは、文字通り黒字であるにもかかわらず倒産してしまうことをいいます。

 

黒字とは、収入が支出を上回っている状態のことをいいます。
赤字とは、黒字とは逆に、支出が収入を上回っている状態のことをいいます。
黒字・赤字という言葉は色んな場面で使われますが、黒字倒産という場合の黒字とは、会計上は利益が出ている状態を指します。

 

倒産とは、会社が借入金や仕入代金といった債務の支払ができなくなり、会社としての活動を続けていけなくなった状態になることをいいます。

 

「黒字なのに倒産?」

黒字と倒産、利益が出ているのに債務を返せない、一見すると矛盾したことを言っているように感じますよね。

 

 

なぜ黒字倒産が起こるのか

それでは、黒字倒産はなぜ起こってしまうのでしょうか。

それは、実際の現金の出入りのタイミングと、会計上の利益を計上するタイミングがズレていることが原因で、利益が出ているけれどもキャッシュ ( 現金 ) がない状態になってしまうことで起こってしまうのです。

黒字倒産の具体的な数値例を見てみましょう。

 

 

黒字倒産の数値例(商品在庫)

商品在庫を原因とする黒字倒産の数値例です。

20X1年のA社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

  1. 1個1万円の商品を100個仕入れました。
  2. 仕入れた商品のうち40個を2万円で売りました。
  3. 仕入れ代金100万円を支払いました。
  4. 売上代金80万円を受け取りました。

 

20X1年のA社の損益計算書 ( P/L ) はこうなります。
売上高 = 2万円 × 40個 = 80万円
売上原価 = 1万円 × 40個 = 40万円
利益 = 売上高80万円 - 売上原価40万円 = 40万円

利益が40万円、立派な黒字企業ですね。

 

次に、20X1年のA社のキャッシュ・フロー計算書 ( C/F ) を見てみましょう。
営業収入 = 2万円 × 40個 = 80万円
商品仕入支出 = 1万円 × 10個 = 100万円
現金の増減額 = 営業収入80万円 - 商品仕入れ支出100万円 = ▲20万円

利益が40万円出ているのに、現金は20万円もマイナスになっています。

 

利益を計算する損益計算書では、仕入れた商品は売れない限り売上原価になりません。
しかし、現金の増減を計算するキャッシュ・フロー計算書では、仕入れた商品は売れなくても代金を支払っているのであれば商品仕入支出になります。
商品在庫の取り扱いが、利益の計算と現金収支では異なってくるのです。

このような状態が続いて、会社の現金が底をついてしまうと黒字倒産になってしまいます。

 

 

黒字倒産の数値例(資金繰り)

資金繰りを原因とする黒字倒産の数値例です。

 

20X2年のB社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

現金は70万円あります

  1. 1個1万円の商品を50個仕入れました。→現金残高70万円、20X2年利益累計▲50万円
  2. 仕入れた商品50個を2万円で売りました。→現金残高70万円、20X2年利益累計50万円
  3. 仕入れ代金50万円を支払いました。→現金残高20万円、20X2年利益累計50万円
  4. 売上代金100万円を受け取りました。→現金残高120万円、20X2年利益累計50万円
  5. 1個1万円の商品を150個仕入れました。→現金残高120万円、20X2年利益累計▲100万円
  6. 仕入れた商品100個を2万円で売りました。→現金残高120万円、20X2年利益累計100万円
  7. 仕入れ代金150万円を支払いました。現金残高→▲30万円、20X2年利益累計100万円

 

20X3年のB社の時系列による経済活動は下記のとおりです。

  1. 売上代金200万円を受け取りました。現金残高→170万円、20X3年利益累計0万円

 

7.において仕入れ代金150万円を支払うのには手もとの現金が30万円足りません。
売上代金200万円を受け取るのはまだ先です。借入などによって30万円を用意できないと黒字倒産になります。

 

一般的なビジネスおいては、仕入れ代金の支払いの方が、売上代金の入金よりも先にきます。そのため資金繰りが必要になってきます。

その逆に、飲食業など現金商売といわれるビジネスの場合は、売上代金の入金の方が、仕入れ代金の支払いよりも先にくるので、資金繰りは楽といわれています。

 

 

黒字倒産を防ぐには

黒字倒産を防ぐためには、利益だけでなくキャッシュ ( 現金 ) にも注意を払うことです。

決算ではキャッシュ・フロー計算書を作成して、過去1年間の現金の動きを把握します。そして期中においては、資金繰り表などを作成して将来の現金の出入りを予測、資金需要に対して十分時間をもって対応できるようにしてください。

利益に比べるとキャッシュの管理はおろそかになりがちですが、キャッシュは利益よりも大切です。そのことをいつも頭において、利益の損得勘定だけでなく、キャッシュの時系列勘定できるようにしてくださいね。

 

 

おわりに

「勘定あっても銭足らず」、まさに黒字倒産を表す言葉ですね。キャッシュフロー経営というものが流行ったのは昔の話ですが、廃れたワケではありません。なくてはならないものに昇華したといえると思います。しつこいですが、利益よりも現金を大切にしてくださいね。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で、ベンチャー企業や起業をお考えのお客様がおりましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、あなたの会社の企業価値を高めるお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
税金や節税、起業などについて、皆様のお役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしかったら情報の一覧もご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。