はじめに
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。
フリーランス・個人事業主として事業を始めるにあたって、色んな書類を税務署や役所に提出する必要があります。これらの書類を作成することはそれほど難しくありません。しかし、初めて書く場合は戸惑ってしまう部分がけっこうあります。
公認会計士・税理士として、港区、渋谷区、新宿区など東京23区でフリーランス・個人事業主事業として起業なさった方をサポートしてきた経験をもとに、フリーランス・個人事業主の方が事業を始めたら提出しなければいけない書類について、具体的な書き方をお伝えしたいと思います。
今回は、税務署に提出する「給与支払事務所等の開設届出書」(個人事業主の場合)の書き方について説明します。
フリーランス・個人事業主ではなく、株式会社など法人を設立した方が「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する場合の記載例については
「給与支払事務所等の開設届出書」(税務署)書き方記載例-会社設立-法人
を参照ください。
個人事業主が提出する「給与支払事務所等の開設届出書」とは
フリーランス・個人事業主として事業を行っている方が、給与の支払者として、国内において給与等の支払事務を行う事務所を開設した場合、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなければなりません。
簡単に言うと、従業員などに給与を支払うことになったときや、家族に青色事業専従者給与を支払うことになったときなどに、届出が必要になります。
給料を支払うときは、フリーランス・個人事業主である貴方が、従業員などの所得税を天引き(源泉徴収)して、従業員に代わって税務署に納めることになります。
「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出すると、源泉徴収した所得税を納付する用紙が会社に送られてきます。
源泉徴収した所得税を納めないとペナルティとして余計に税金を払うことになってしまうので、「給与支払事務所等の開設届出書」は忘れずに提出してください。
給料の額が少ないと所得税を天引き(源泉徴収)する必要がありません。
しかし、給料の額が少なくて源泉徴収する必要のないパートやアルバイトを雇った場合でも「給与支払事務所等の開設届出書」は提出することになります。
給料の額は関係なく、給料を支払うことになったら提出しなければいけないので注意してください。
フリーランスや個人事業主の方で、自分以外に従業員、パート、アルバイトなどがいない場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません。
個人事業の場合は、儲けがそのまま自分の所得になるので、自分に給料を払うという概念がないためです。
税務署に提出した「個人事業の開業届」に、給料の支払を行っている旨の記載をしている場合は、この「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなくてもよいことになっています。
しかし実際には、その場合でも「給与支払事務所等の開設届出書」の提出を求められる場合があります。「個人事業の開業届」に給料の支払を行っている旨を書いている場合でも、面倒ですが「給与支払事務所等の開設届出書」を提出してください。
「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する税務署
「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する税務署は、給与支払事務所の所在地を管轄する税務署になります。基本的には個人事業の納税地を管轄する税務署と同じ税務署になると思います。
「給与支払事務所等の開設届出書」の提出期限
「給与支払事務所等の開設届出書」の提出期限は、給与支払事務所の開設の事実があった日から1か月以内です。
「給与支払事務所等の開設届出書」の用紙
「給与支払事務所等の開設届出書」の用紙は、国税庁HPにPDFファイルがあるので印刷して使って下さい。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/009.pdf
個人事業主が「給与支払事務所等の開設届出書」の具体的な書き方、記載例
フリーランス・個人事業主の方が税務署に提出する「給与支払事務所等の開設届出書」の具体的な書き方、記載例は下記のようになります。
https://www.integrity.or.jp/wp-content/uploads/2014/05/7f8c045bffa520a708e28c60e64a9395.pdf
① 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
開設に○をします。
② 提出年月日
和暦で「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する日を書きます。
③ ○○税務署長殿
「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する税務署名を記載します。
提出先の税務署は、給与支払事務所の所在地を管轄する税務署になります。基本的には個人事業の納税地を管轄する税務署と同じ税務署になると思います。
東京都区内には複数の税務署がある場合があるがあるので注意してください。
ちなみに、
- 港区には、麻布税務署と芝税務署があります。
- 渋谷区には、渋谷税務署だけです。
- 新宿区には、新宿税務署と四谷税務署があります。
所轄の税務署が分からない場合は、「住所 税務署 所轄」で検索してみてください。
④ ※整理番号
記載不要です。
⑤ 氏名又は名称
お店の名前など屋号がある場合はその名称を書きます。フリガナも忘れずに書いてください。
お店の名前などがない場合は、自分の名前を書きます。
⑥ 住所又は本店所在地
個人事業の所得税の納税地の住所を書きます。
納税地が自宅住所になっているのであれば、自宅の住所を書いてください。
納税地がお店や事務所の住所になっているのであれば、そこの住所を書いてください。
⑦ 代表者氏名
自分の名前を書きます。フリガナも忘れずに書いてください。
お店の名前など屋号がなくて⑤に自分の名前を書いた場合でも、再度⑦に自分の名前を書きます。
認印で構いませんので、押印も忘れずにしてください。
⑧ 開設・移転・廃止年月日
開設に○をします。
給与支払事務所を開設した日を書きます。
基本的には開業した日を書くことになると思います。
⑨ 給与支払を開始する年月日
給与支払事務所を開設した月に給与の支払が開始されない場合は、給与の支払を開始した日(又は開始予定日)を書きます。
例えば、開業した日は7月だけど、実際の給与の支払いは11月からスタートするといった場合です。
給与支払事務所を開設した月に給与の支払が開始される場合は、空欄になります。
⑩ 届出の内容及び理由
個人事業の開業の場合には、開設の「開業又は法人設立」の□にチェックを入れてください。
⑪ 給与支払事務所について
個人事業の開業の場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する場合は、空欄になります。
⑫ 従業員数
給与等を支払う従業員の数を職種別に書いてください。
フリーランス・個人事業主の本人は含めません。
また、法人と違って、フリーランス・個人事業主の方の場合は、役員の人数を書くことはありません。
⑬ その他参考事項
基本的には空欄のままになります。
⑭ 税理士署名押印
税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する段階で、関与税理士、顧問税理士が決まっているなどで、「給与支払事務所等の開設届出書」を税理士に作成してもらった場合は、その税理士に署名と押印をしてもらいます。
「署名」とあるので、税理士本人の自筆になります。
⑮ ※税務署処理欄
税務署が処理のために使う欄であるため、空欄のままにしてください。
フリーランス、個人事業主として起業する際に提出する主な書類
フリーランス、個人事業主として起業する際に提出しなければならない書類は、税務署に提出する「給与支払事務所等の開設届出書」以外にもいくつかあります。
下記のページも参照ください。
フリーランス、個人事業を始めるにあたって提出する書類一覧
「個人事業の開業届書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「個人事業開始等申告書」(都道府県税事務所)書き方記載例(東京都)-フリーランス・個人事業主
「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「所得税の青色申告承認申請書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「青色事業専従者給与に関する届出書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「給与支払事務所等の開設届出書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主
おわりに
「給与支払事務所等の開設届出書」を自分で書いて税務署に提出するのも良いですが、フリーランス・個人事業主の方が、誰かに給料を支払うようになったら、ぜひ税理士に相談してみてください。
家族に対する給料を個人事業の必要経費にするためには、細かい制約がたくさんあります。提出書類についてだけではなく、家族に対する給料をどのように決めればいいかなどのアドバイスをしてくれるはずですよ。
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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。