アーカイブ: 2014年3月

育児休暇中の妻を夫の控除対象配偶者にして節税

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、育児休業している妻を夫の控除対象配偶者にして節税する方法を紹介します。

妻がフルタイムで働いている夫婦共働き世帯は年々増加しています。このときは妻にも相当程度の所得があるため、夫は妻を控除対象配偶者にはしていないと思います。しかし、妻が育児休暇中の場合、夫の控除対象配偶者に入ることで節税できるかもしれません。

 

 

配偶者控除の概要

配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいるときは、所得を38万円減らして税金を安くしてあげますよ、という制度です。所得500万円の人の所得が38万円減ると10万円ちょい税金(所得税+住民税)が安くなります。

 

 

控除対象配偶者の要件

控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で、下の5つ全てに当てはまる人をいいます。

  1. 民法の規定による配偶者である(内縁関係は該当しない)
  2. 納税者と生計を一にしている → イメージとしては同じお財布で生活している感じです
  3. 年間の合計所得金額が38万円以下である
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない
  5. 白色申告者の事業専従者でない

 

 

配偶者特別控除の概要

配偶者特別控除とは、配偶者の所得が38万円を超えるため配偶者控除が受けられないときでも、配偶者の所得が38万円超76万円未満であるならば、所得を3万円~38万円減らして税金を安くしてあげますよ、という制度です。配偶者の所得が76万円に近づくにつれ減らしてくれる所得の金額は減少していきます。

 

 

配偶者特別控除を受けるための要件

配偶者特別控除を受けられるのは、控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であり、かつ配偶者が、下の6つ全てに当てはまる場合です。

  1. 民法の規定による配偶者である(内縁関係は該当しない)
  2. 納税者と生計を一にしている
  3. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じ一度も給与の支払を受けていない
  4. 白色申告者の事業専従者でない
  5. ほかの人の扶養親族となっていない
  6. 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満である

 

 

妻の年間の合計所得金額が78万円未満

妻の合計所得金額が78万円未満となれば夫の税金が安くなる可能性がありますが、妻もフルタイムで働いている場合、年間の合計所得金額が76万円(給与額面で141万円)以上となることが多いと思います。
そして、赤ちゃんが生まれて妻が育児休業に入り育児休業給付金をもらえるようになっても、けっこうな額の育児休業給付金がもらえるため、夫の控除対象配偶者には入れないと思っている人が大半です。

 

 

出産育児関連の公的給付は非課税

出産したときにもらえる出産育児一時金、出産の前後一定期間にもらえる出産手当金、育児休暇中にもらえる育児休業給付金は、非課税所得なので所得金額には含まれません。よって妻が育休に入り、1~12月の間に妻が会社からもらったお給料が141万円未満であるならば、夫の控除対象配偶者もしくは特別配偶者控除をうけることができて、夫の税金が安くなる可能性があります。もちろん、妻は会社に籍を置いたままでも大丈夫です。

 

 

やりかた

会社勤めの方は、年末調整で受けることができます。会社の経理もしくは人事に配偶者控除を受けたい旨を伝えて、「給与所得者の扶養控除等(異 動)申告書」又は「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に妻の名前と所得を書いて会社に提出するだけで終わりです。

フリーランス・個人事業主の方など、それ以外の方は確定申告で行うことになります。

 

 

まとめ

もったいないことにこの節税を行っている人はとても少ないです。夫婦共働き世帯でも、妻が育休に入ったら、配偶者控除で夫の税金を減らせるか検討してみてください。出産育児関連の公的給付を除いて妻が1~12月の間に会社からもらったお給料が141万円未満なら節税できます。

 

 

おわりに

配偶者控除、配偶者特別控除につきましては次のページも参照ください。
配偶者控除、配偶者特別控除とは?1-けっこう奥が深いです
配偶者控除、配偶者特別控除とは?2-いろんな壁があります

 

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

社会保険料の削減(個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は節税ではありませんが、同じ効果がある社会保険料削減のお話をしたいと思います。

 

 

社会保険の概要

社会保険とは一般的に健康保険と厚生年金、労働保険(雇用保険と労災保険)のことを言います。法人は従業員の有無を問わず全ての法人に加入義務があり、個人事業主は5人以上の従業員がいる場合(一部の業種を除く)に加入義務があります。

 

 

社会保険料

健康保険と厚生年金の保険料は労使折半です。事業主(法人、個人事業主)が半分、従業員が半分支払います。雇用保険の保険料は事業主が多めに支払い、労災保険の保険料は事業主が全額支払います。
この社会保険料の負担はバカにならないので、なんとか削減したいと考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

 

 

社会保険料の削減

以下においては狭義の社会保険(健康保険と厚生年金)についてお話します。
社会保険の保険料は、毎月のお給料の金額をもとにして標準報酬月額が決まって、その標準月額報酬に保険料率を乗じて計算されます。

 

具体的な数字でみてみましょう。

 

標準報酬月額は、「報酬月額〇〇円以上〇〇円未満 標準報酬月額〇〇円」というように決定されます。自分の会社の健康保険組合を持っていない中小企業が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の東京の平成26年度の場合はこうなっています。

  • 月額報酬が290,000円以上310,000円未満の場合 → 標準報酬月額は300,000円
  • 月額報酬が310,000円以上330,000円未満の場合 → 標準報酬月額が320,000円

このように毎月のお給料の金額の範囲があって、その範囲内では一律で標準月額報酬が決められてしまうのです。上記の例ですと、毎月のお給料が310,000円と309,990円と10円違うだけで、標準月額報酬は20,000円も差が出てしまうのです。

 

保険料は標準月額報酬に保険料率を乗じて計算されるので、標準月額報酬が下がれば保険料は安くなります。

 

事業者負担分 保険料 従業員負担分 保険料
お給料 標準月額報酬 健康保険 厚生年金 合計 健康保険 厚生年金 合計
309,990円 300,000円 17,535円 25,680円 43,215円 17,535円 25,680円 43,215円
310,000円 320,000円 18,704円 27,392円 46,096円 18,704円 27,392円 46,096円
差額 10円 20,000円 1,169円 1,712円 2,881円 1,169円 1,712円 2,881円

310,000円のお給料を309,999円にするだけで、事業主と従業員の双方が保険料を毎月2,881円削減することができます。事業主は2,881円節約できるし、従業員はお給料の額面が10円減ってしまいますが、手取りは2,871円増えることになります。

2,881円の削減なんて大したことないと思われてしまうかもしれませんが、
従業員が10名いるとすると、1年間で345,720円、10年間で3,457,200円の削減になります。

  • 2,881円×12か月×10名=345,720円
  • 345,720円×10年=3,457,200円

従業員が100名いるとすると、1年間で3,457,200円、10年間で34,572,000円の削減になります。

  • 2,881円×12か月×100名=3,457,200円
  • 3,457,200円×10年=34,572,000円

このように社会保険料削減のポイントは、給料を標準月額報酬が繰り上がる直前の金額に設定することにあります。

小さな節約でも積み上がれば大きな金額になりますね。

お給料の額を決めるときには、ぜひ標準月額報酬の金額の境目を意識してください。
社会保険料の削減についてお話しましたが、ここでは理解を目的に詳細を省いてざっくりと説明したので、実際の運用の際には税理士や社会保険労務士にご相談ください。

 

 

おわりに

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

少額減価償却資産の特例をつかった節税(フリーランス・個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、フリーランス、個人事業主、法人の方の少額減価償却資産の特例をつかった節税を紹介します。

 

 

少額減価償却資産の特例の概要

取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成15年4月1日から平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を、その年の必要経費、損金にすることができます。

12月が決算月とすると、通常は12月に減価償却資産を購入しても、12月の1ヶ月分しか減価償却費の計上ができません。しかし、少額減価償却資産の特例をつかえば、30万円未満の少額減価償却資産を購入した場合、その全額を必要経費にすることができます。もちろん、節税になるからといって、いらないモノまで購入する必要はありません。もともと購入の予定があったモノであれば、前倒しで購入することで、利益が出すぎてしまった年の利益を減らして節税することができます。

 

 

少額減価償却資産の特例を受けることができるフリーランス・個人事業主、法人

青色申告をしているフリーランス、個人事業主、資本金1億円以下などの法人の方が少額減価償却資産の特例を受けることができます。

白色申告をしているフリーランス、個人事業主、法人の方はこの特例はつかえません。

 

 

平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合

平成26年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合とは、購入しただけではダメで、実際に使い始めていないと、少額減価償却資産の特例はつかえないということです。12月末ギリギリに機械を買って、使わずに寝かせている場合などは対象外になってしまいます。パソコンを10台買って、そのうち6台については買った年から使用しているが、4台は使用していない場合、6台のみが少額減価償却資産の特例の対象になります。

なお、平成26年3月31日までとありますが、平成28年3月31日までに延長される予定です。

 

 

少額減価償却資産の特例の適用対象となる資産

取得価額が30万円未満の減価償却資産です。取得価額が30万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定します。構築物のうち例えば枕木、電柱など単体では機能を発揮できないものについては、社会通念上一の効用を有すると認められる単位ごとに判定します。

消費税の経理処理の方法によって、税込みで経理処理している場合は税込みで30万円未満かどうか判定して、税抜きで経理処理している場合は税抜きで30万円未満かどうか判定します。消費税の免税事業者の場合は、税込みで30万円未満かどうか判定します。

 

 

1年あたりの合計額が300万円に達するまでが、その年の限度です

その年において、複数の少額減価償却資産を取得してして事業の用に供した場合には、合計額が300万円に達するまでの分が、少額減価償却資産の特例の対象となります。

1年間で24万円のパソコンを14台買った場合、12台(24万円×12台=288万円)は、全額その年の必要経費になりますが、残りの2台については減価償却の手続きにより、そのうちの一部のみしか、その年の必要経費になりません。300万円までの全額が必要経費になるのではなく、300万円に達するまでの台数で計算します。

開業年など青色申告の月数が12か月より少ない場合は、300万円×(青色申告月数 / 12か月)が上限になります。

 

 

経理処理

経理処理については、消耗品費などで購入時に経費処理するのではなく、購入時はいったん資産として計上してから、決算で全額を減価償却費として計上しましょう。

忘れやすいポイントですが、少額減価償却資産の特例の適用を受けた資産は、その年に全額必要経費、損金になったとしても、地方税である償却資産税は課税されます。

10万円未満の少額減価償却資産として損金計上した場合や、一括償却資産として3年間で損金算入する方法を選択した場合には、償却資産税は課税されませんので、どの方法により損金算入するかの比較検討も必要となります。

 

 

少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))を添付して申告(法人)

少額減価償却資産の特例を受けるためには、事業の用に供した事業年度において、少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき損金経理するとともに、確定申告書等に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))」を添付して申告することが必要です。

 

 

少額減価償却資産の明細書を提出(フリーランス、個人事業主)

少額減価償却資産の特例を受けるためには、確定申告の際に、「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を合わせて提出しなければなりません。しかし、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に次の事項を書いて提出して、かつ、この減価償却資産の明細を保管している場合は、「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」の提出を省略することができます。

  1. 取得価額30万円未満の減価償却資産について、措置法第28条の2第1項の規定を適用していること
  2. 適用した減価償却資産の取得価額の合計額
  3. 適用した減価償却資産の明細は、別途保管していること

 

 

その他の注意点

この特例は、研究開発税制を除き、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。

取得価額が10万円未満のものについては、この特例の適用はありません。この特例を使わなくても、そもそも必要経費、損金にすることができます。そして、10万円未満のものは、消耗品費などで処理してかまいません。

一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについても、この特例の適用はありません。

この特例は取得価額が30万円未満の減価償却資産について適用されるので、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権などの無形減価償却資産も対象になりますし、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産も対象となります。

 

 

まとめ

利益がいっぱい出ちゃいそうだなと思ったら、30万円未満の減価償却資産を購入して必要経費、損金に計上しましょう。ただし、買っただけではダメです。買った年に使い始めないといけません。

 

 

おわりに

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

税務調査-受取手形、支払手形、売掛金、買掛金、貸倒損失、在庫、棚卸資産

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

税務調査における個別の調査項目について具体的に説明します。
今回は、受取手形、支払手形、売掛金、買掛金、貸倒損失、在庫、棚卸資産の調査についてです。

 

受取手形、支払手形

取引内容の調査と受取先(振出人や裏書人)、支払先の確認をします。

ジャンプ手形や融通手形、預かり手形がある場合は、その内容について説明できるようにします。

 

売掛金、買掛金

取引内容の調査と得意先、仕入先との残高照合を行います。

請求の締日から期末までの売上・仕入は正しく記入されているかも確認します。値引、割引、割戻、返品、リベート、貸倒れなどの処理が妥当かもチェックされます。

また、長い期間動きがなく滞留しているものがないかも調べられるので、債権債務の年齢表などを作成しておくと説明がしやすいですね。

 

貸倒損失

必ず調査される項目であり、指摘事項となることも少なくありません。回収不能として貸倒れ処理する場合は税法の条件に合致しているか十分に検討します。

  1. 税法上の損金算入条件に合致しているか → 再建放棄通知書や債権者集会議事録といった証拠を用意します
  2. 回収不能性が立証できるか → 債権者に支払能力がないこと、行方不明になっていることなど、興信所の記録や得意先元帳などで証明します。
  3. 一定期間取引停止の立証はできるか → 取引停止後1年以上経っていることを証明するために、売掛金台帳や売掛金残高表、請求書の控えなどを用意します。

 

在庫、棚卸資産

  • 利益 = 売上 - 売上原価
  • 売上原価 = 期首在庫 + 仕入 - 期末在庫
  • 利益 = 売上 - 期首在庫 - 仕入 + 期末在庫

利益の計算は上記のように計算します。そのため期末の在庫が確定すると利益も確定します。期末在庫の確定は期末に実地棚卸だけを行って、帳簿棚卸を行っていない会社が多いです。在庫を調整すれば容易に利益を調整することが可能です。期末在庫が少なければ、利益も小さくなり税金が安くなるため、特に厳しく調査されます。

過去実績と比較して大きく増減している、売上や仕入外注費に対する在庫の比率が変動している場合は、その理由を説明できるように準備します。
在庫=数量×単価であるための、数量と単価の二つの面からも調査されます。

数量

  1. 実地棚卸は実際に行われたか → その時の棚卸票、棚卸集計表などの原始記録はあるかなどが調べられます。清書した集計表だけでなく、実際に使用した棚卸票や照合記録を整理して保管しておきます。
  2. 外注先にある預け品等の社外にある在庫、得意先への委託販売品や貸出品なとの計上漏れはないか → 期末に残高確認書や残高証明書などを取り寄せます。
  3. 期末直前の仕入、期末直前の返品、翌期初めの出荷に対応する在庫が計上されているか。
  4. 材料の消費を水増しして、原価が過大に計上されていないか。
  5. 材料、仕掛品、完成品の一部を除外して、在庫を減らしていないか。
  6. 材料、完成品だけでなく仕掛品の棚卸も行っているか → 外注先などの社外になる仕掛品は、計上漏れがあっても分かりにくく、利益操作に利用されやすいため、調査官もきっちり調べます。翌期の製品の完成や売上から簡単に仕掛品の除外が発見されます。原価基準や生産予定表を整備して、計上根拠を明確にする必要があります。

単価

  1. 評価方法は税務署に届出た方法によっているか
  2. 在庫に加えるべき仕入諸掛りが除外されていないか
  3. 仕掛品の評価の基準はどうなっているか、その基準は合理的か → 原価計算の方法は、原価管理の面からあらかじめ整備しておくことが望ましいです。原価計算の方法が定まっていると調査官への説明も容易になり信用も上がります。
  4. 在庫の評価減を計上した場合、その根拠は何か → 調査官は評価減について厳しく調べます。評価減を行う場合は、商品の過去の動き、売価、調査時期までの動き、処分価額などの数値的根拠をもとに十分に検討してから行いましょう。そして税務調査の際は、その資料をもとに説明することになります。

 

税務調査の関連ページ

税務調査につきましては、下記の関連ページも参照ください。

 

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

役員社宅(会社所有)で節税しよう(法人)

はじめに

家が好きな東京都港区の税理士
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、会社が住居を所有して、それを社宅にすることで節税する方法を紹介します。賃貸物件による社宅の節税については、賃貸物件の役員社宅で節税しよう(法人)を参照下さい。

これからマンションなどの住居の購入を考えている会社経営者の方は、個人で所有するのではなく、会社で購入してそれを社宅として経営者ご自身にお貸しすることを考えてみてください。会社で所有することにより、法人税や相続税を節税することができる場合があります。

 

 

役員社宅(会社所有)による節税の概要

個人で住居を購入しても、住宅ローンの金利や、固定資産税、減価償却費などを所得税における必要経費にできませんが、会社で購入することでこれらの経費を法人税における損金することができるのです。会社の損金にできるということは、その分会社の儲けが減り、税金を減らせることになるのです。

 

 

会社で社宅を所有するメリット

会社名義で住居を購入、その物件を役員社宅として経営者に貸します。会社で住居を購入した場合、借入金の利息、不動産取得税、登記料、印紙、固定資産税、修繕費などの費用を会社の経費として税務上損金にすることができます。時の経過とともに住居の価値の下がりますが、その減価分を減価償却といった手続きで会社の損金にすることもできます。

会社ではなく個人で住居を購入した場合、これらの住居にかかる経費は法人税上の会社の損金にならないのはもちろん、個人における所得税の必要経費にもなりません。

経営者が亡くなったときに相続が発生しますが、住居について、会社が社宅として社宅を所有しているのと経営者自らが所有するのでは、前者の方が相続税における評価額が安くなり相続税を節税できる場合が多いです。しかし、かならず節税できるとは限らないので、相続対策で社宅を購入する場合は必ず税理士と相談して下さい。

 

 

経営者が会社に支払う家賃

経営者は会社に家賃を支払わなければなりません。

経営者は国税庁が定めた「一定の家賃」以上の額を会社に支払うことで、税務署に社宅であると認めてもらえます。この定められた額より少ないと、役員報酬とみなされ税金上損をしてしまうので注意が必要です。

家賃を払わなければいけないならメリットなんてないじゃないか、と思われるかもしれませんが、経営者が会社に支払わなければならない家賃は家賃相場に比べて非常に安い金額となっているのです。この「一定の家賃」を算出すると、だいたい家賃相場の20%ほどになります。つまり、家賃相場の20%ほどの家賃を会社に支払うだけで、住居の支払利息や固定資産税、減価償却費を会社の損金とすることができるのです。

社宅が社会通念上社宅と認められないような豪華社宅にあたるときは、次の算式ではなく、時価が賃貸料相当額なります。豪華社宅に該当する場合は、社宅をつかった節税はできません。豪華社宅とは、例えば240平方メートルを超えた広すぎる場合や、そこまで広くなくてもプールがある場合などが該当します。

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)以下の場合

次の1,2,3の合計額

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

 

床面積が99平方メートル(木造などの場合は132平方メートル)を超える場合

次の1,2の合計額の12分の1

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×10%(木造等の場合は12%)
  2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

 

会社で社宅を所有するデメリット

住宅ローンを利用して個人で住居を購入した場合は、住宅ローン控除という税金のメリットがあり所得税を減らすことができます。会社で購入すると、住宅ローン控除は受けられません。

借入の条件は個人よりも法人の方が不利になることが多いです。個人であれば条件の良い(金利が低い)住宅ローンを組むことができますし、フラット35も利用できます。法人では住宅ローンが組めないので、住宅ローンよりも条件の悪い(金利が高い)不動産担保融資などで借りることになります。

 

 

売るときのこと考える

会社所有での社宅を検討する場合は、売る時のことまで考えましょう。

 

 

売却益が生じる場合

個人所有では、有名どころだとマイホームを売った時の特例として3,000万円の特別控除があります。条件に合えば家を売って儲かった分のうち3,000万円はチャラにしてあげるよ、という特例があります。

会社所有では、儲かった分はそのまま利益として、法人税法上の益金になり法人税がかかります。
売却益が生じる場合は、個人所有の方が有利と言えます。

 

 

売却損が生じる場合

個人所有では、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例というものがあります。条件に合えば損した分だけ所得税を減らしてあげるよ、という特例です。

会社所有では、損した分はそのまま損失として、法人税法上の損金となり、法人税を減らすことができます。

売却損が生じる場合は、条件のない会社所有の方が有利と言えます。

将来、不動産が値上がりするか値下がりするかは分かりません。そのため、売るときのことを考えて、個人所有か会社所有かを考えるのは難しいですね。

 

 

まとめ

個人で住居を所有するよりも、会社で住居を所有して社宅として貸し付けたほうが節税になることがあります。

しかし、売るときのことを考えると、個人所有と会社所有のどっちが得かは分かりません。

個人的な意見としては、以前紹介した賃貸物件の社宅利用による節税の方をオススメします。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧を参照ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。